東山彰良(左)、佐橋佳幸(右)
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ママがロックンロールしてたころ
著者:東山 彰良
定価:1,870円(10%税込)
ママがロックンロールしてたころ
著者:東山 彰良
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メモ用紙がアーティストでびっしりに

――東山さんの『ママがロックンロールしてたころ』の刊行を記念して、親交のあるお二人に音楽と小説についてお話しいただきたいと思います。

佐橋 僕、『ママがロックンロールしてたころ』を読み始めてすぐに、メモを取り始めたんです。出てくるアーティストを全部書き出したんですが、すごいですよ、この数(紙に文字がびっしり並んでいる)。これだけたくさんアーティストの名前が出てくる小説って読んだことがない。だって普通、ヨーマ・コウコネンは出てこないでしょう。「ジェファーソン・エアプレイン」のギタリストだけど、ベースのジャック・キャサディと「ホット・ツナ」としても活動してるから、CDショップで「ホット・ツナといっしょにならべて」ってセリフがある。ここでこの名前が出てくるかって、爆笑しましたよ。ほかにもハリー・ベラフォンテの『Jamaica Farewell(さらばジャマイカ)』が出てきて、チャック・ベリーのバージョンもいいなんて書いてある。こんな小説はほかにないですよ。
東山 (うれ)しいです。佐橋さんがどう思うのか、気になってたんですよ。
佐橋 「なるほど、この話だったら対談相手に僕を選んでくれたのも分かるよな」と思いました。ギタリストだけでもたくさん出てくるけど、まさかレオ・コッケが出てくるとは。「澄んだ空気がレオ・コッケのギターの音色みたいに野山に満ちていた」なんて。12弦ギターの名手で僕も大ファン、すごいギタリストですけどね。
 小説としては、ここのところ、東山さんの作品は『邪行(やこう)のビビウ』と『三毒狩り』と、ハードボイルド路線が続いていたので、久しぶりにそっち方面とは別の東山さんの作品が読めて楽しかった。結局はどっちも泣かされちゃうんだけどね。
東山 よかった。佐橋さんにそう言っていただけてホッとしました。
佐橋 東山さんの小説はぜんぶそうだけど、いつの間にか心を揺さぶられていることに気づくというか、身体(からだ)が反応してしまうんですよ。コロナ禍に『小さな場所』を読んだときも心にぽっと()がともるような気持ちになりました。あの頃、世の中が(すさ)んでいましたから救われました。

――お二人が知り合ったのはいつ頃ですか。

佐橋 いつだったろうと思って、東山さんと僕を引き合わせてくれたラジオパーソナリティの山本真理子さんにLINEで聞いてみました。二〇一七年の七月三十日でした。
東山 もう十年近いんですね。
佐橋 山本さんは以前からの知り合いなんですけど、山下達郎さんのツアーで福岡に行くときに連絡があって、「佐橋さん、相変わらず読書熱冷めてないよね」と言うから「移動中はいつも本読んでるよ」と答えたら、「東山彰良さんって知ってる?」と。「『(りゅう)』でしょう。読んだよ」と言ったら、「やっぱり読んでたか。今度、福岡で紹介するから」って。真理子さんは東山さんと福岡でラジオ番組(RKBラジオ「東山彰良 イッツ・オンリー・ロックンロール」二〇二六年三月末に終了しました)をやっているんですよね。それで東山さんを紹介していただいたんですけど、お会いしたそのときに思ったのが、音楽にすごく造詣が深い。
東山 そんなことないですよ、ぜんぜん。佐橋さんに言われると恐れ多いです。
佐橋 その翌年、東山さんが『僕が殺した人と僕を殺した人』で読売文学賞を受賞されたときにメールをいただいて、「東京に知り合いがあまりいないので、授賞式に来てもらっていいですか」と。「僕でいいんですか」ってお返事したんです。
東山 図々(ずうずう)しくお願いしたら、来てくださったんです。
佐橋 帝国ホテルの授賞式を後ろのほうで拝見して、その流れで東山さんと出版社の皆さんとの食事会に同行させていただきました。あのときに東山さんに紹介していただいた人たちのうち、二人ぐらいからいまだにメールが来ますよ。初めて知ったんですけど、文学業界の人って音楽に詳しい人がけっこう多いんですね。あのときも同業者と飲んでいるのかと思うくらい楽しかったんです。そんなご縁をいただいて、それからは博多に行くときには必ずと言っていいほど東山さんにご連絡して、お時間があればお会いしたり、東山さんと山本真理子さんのラジオ番組に出演させていただいたりというお付き合いが続いています。