風カメ界の長澤まさみ

身体の芯から冷えるような寒さが続いていた2025年2月のとある日の夜、都内のシティホテルのラウンジで彼女と初めて会った。

チチ──。レタッチャーの瑞月は、「今、風俗写真家のなかで、チチさんは1位2位を争うほどの人気」と絶賛していた。KOHAKUは「SNSでバズる写真を得意とする新世代の風俗カメラマンではないでしょうか」と評する。確かに、Xでは何度も「撮影・チチ」とクレジットされている人気風俗嬢の写真を見かけていた。

チチはコートを脱ぐと、黒のニットでワンショルダーのワンピース姿に。シックでありながらセンスの良さを感じさせる。名刺交換をし、マスクを外して現れた素顔を見て驚いた。写真でもきれいな雰囲気は伝わるが、実物はそれ以上。大袈裟ではなく、俳優の長澤まさみ似の美人なのだ。インタビューをしながら、ずっとドキドキしてしまった自分がちょっと恥ずかしい。

シティホテルのラウンジに現れた美人は風俗カメラマンだった
シティホテルのラウンジに現れた美人は風俗カメラマンだった
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そんな気持ちを気づかれないように、話を聞くことにした。まずは、子どもの頃の話から始めてもらった。

「姉と弟、3人きょうだいの真んなかで、かなりインドア派でした。中学の時は水泳部に所属していました。姉も弟も水泳をやっていたので、なんとなく私も始めましたが、家でゲームをやったりしているほうが好きでした。高校に行ってからは、部活はしませんでしたね」

友だちも少なかったと、チチは振り返る。きょうだいがいながらも、内省的な面を強く感じさせる子ども時代を淡々と、そして一つひとつの言葉をじっくり考えて選ぶように話す。その姿がとても印象的だった。

「将来については、自分が何をやりたいのか、はっきりしたものが見えなくて、高校卒業後は医療系の専門学校や税理士の学校に通いましたが、長続きしなかったんです」

ナイトワークをしている友人の手伝いがきっかけで写真家になったチチ(写真/書籍より)
ナイトワークをしている友人の手伝いがきっかけで写真家になったチチ(写真/書籍より)

そんなチチのターニングポイントは、風俗嬢をしていた友人の写真撮影だったと語る。

「仲のいい子がナイトワークをしていて、ある時、写真の悩みを聞いたんです。お店によっては、1日に何件も写メ日記を投稿しなければいけないというルールがあって、ストックの写真が足りない。自撮りでいい写真が撮れないって。日記の文章は書けるけど、いい写真が無いから困っている、と。あまり深く考えずに、『じゃあ、手伝おうか?』と言って、その子を撮影したんです」

短大在学中のタイミングだった。その時に撮った写真を、自身のXにもポスト(投稿)した。顔をぼかしたり、首から下の肢体の写真は反響が高く、写真の依頼が舞い込んできた。約4年前のことで、その流れで風俗カメラマンとして自立した。

パネル用の写真も撮るが、Xや写メ日記用の写真もふんだんに撮る。新世代の風俗カメラマンと呼ばれる所以だ。

当時の愛機はソニーのα7cⅡ。ミラーレス一眼レフの名機として知られるもの。全て独学で始めた仕事だった。ちなみに、チチは「風俗」という言葉を使わず、「ナイトワーク」と表現する。この言葉の使い方に、彼女のこだわりの一端を感じた。

「ナイトワークをがんばっている子を、本当に尊敬しているんです。仕事自体も重労働なのに、加えて写メ日記やSNSの投稿、お客さんとLINEでの連絡など、休む暇もない。そんな子たちが、私の撮影にも来てくれる。この撮影も趣味ではなく、仕事の一環なわけです。人生のほとんどを仕事に使っているようなもの。尊敬しかありません」