SNS誹謗中傷対策にAIシステムを導入

――就任のあいさつでとてもタイムリーな課題だと思ったものが一つあります。現在、選手や監督に対するネット上での誹謗中傷が非常に深刻な問題になっています。メンタルを病む人が後を絶たず、これらSNSなどの対応について積極的にやっていきたい旨を発言されていました。今の取り組みについて聞かせて下さい。

まだ試験段階でしたが、2025年のクライマックスシリーズと日本シリーズに出場する選手を対象に、SNS上での誹謗中傷を自動検出するAIシステムを導入しました。 AIがSNS上の投稿を常にモニタリングして、不適切な内容を通報して削除する仕組みです。

実際にやってみたのですが、一定のいい効果が出たというところから、これからも続けたい気持ちがあります。選手は本当に頑張っていますし、もちろん選手だけじゃなくて審判の方や監督、コーチもそうです。みな勝つためにやっているわけで、ときにプレーのミスや采配が裏目に出たりすることもありますが、それもすべて結果論です。

今の時代、ほとんどすべての選手がSNSをやっていますから、嫌でも誹謗中傷は目に入って来ます。選手会としては選手の人権、名誉に関わる問題ですから、安心してプレーに集中してもらいたいです。悪質なものはSNS各社に通報されます。

――クライマックスと日本シリーズにおける一定の成功を踏まえて今年のWBCについてもこのAIによる検出・通報システムは導入する考えですか。

はい。で、WBCでもやっていこうという話にはなってるんですけど、そこは各球団やNPBも巻き込んで一緒に予算を組んでお金を出し合ってやっていこうという交渉をしています。

――所属球団やNPBと一緒に選手を守って行こうという姿勢は重要ですね。選手の国籍とか属性に関するヘイトスピーチみたいなものが出てきたら球場にお客さんも足を運べなくなってしまう。

そうですね。危機感は球団とも共有していきたいですね。

――最後に近藤会長も出場が決まっているWBCにおける選手の補償の問題について。もちろん選手としてモチベーションの上がる大きな世界大会ですが、レギュラーシーズンとの兼ね合いで、開幕前に出場して不調に陥ったり、ケガをしたら、その補償をどこがするのかという問題が、常に議論されています。

また今年のWBC大会については、このケガに対する保険(選手が大会中に負傷した場合、所属球団に支払われる保険)が適用されなかったプエルトリコの選手たちが欠場を決めるというような事態にもなっています。WBCに対する選手会のスタンスを聞かせて下さい。

そこはやはり、永遠の課題ですね。WBCに出る事は非常に名誉なことですが、選手がどこから年俸をもらっているかと考えたら、シーズンの方が大事なのは事実です。

国を代表して日の丸を背負って試合に出場する、そういう大切な大会にケガの補償などをしっかりと付帯させて、選手が心配することなく、全力でプレーできるようにする。それも選手会の役目だと思うのです。

私は前回優勝しているからこそ、またあの場所に行きたいという気持ちがありますが、実際問題、他の選手が代表として選ばれたときに、リアルな環境を見ても出たいと思ってもらえるように環境を整備していきたいですね。

文/木村元彦

労組日本プロ野球選手会をつくった男たち
木村 元彦
労組日本プロ野球選手会をつくった男たち
2025/11/6
2200円(税込)
240ページ
ISBN: 978-4797674712
初代会長の中畑清、FA制度導入の立役者・岡田彰布、球界再編問題で奮闘した古田敦也、東日本大震災時に開幕延期を訴えた新井貴浩、現会長の曾澤翼など歴代選手会長に聞く、日本プロ野球選手会の存在意義とは。 2025年現在から40年前の1985年11月に設立された「労働組合日本プロ野球選手会」。 一見、華やかに見える日本プロ野球の世界だが、かつての選手たちにはまともな権利が与えられておらず、球団側から一方的に「搾取」される状態が続いていた。そうした状況に風穴をあけたのが「労働組合日本プロ野球選手会」であった。大谷翔平選手がメジャーリーグで活躍する背景には、彼自身の圧倒的な才能・努力があるのは言うまでもないが、それを制度面で支えた日本プロ野球選手会の存在も忘れてはならない。 選手たちはいかに団結して、権利を獲得していったのか。当時、日本プロ野球の中心選手として活躍しながら、球界のために奮闘した人物や、それを支えた周りの人々に取材したスポーツ・ノンフィクション。
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