官僚の保身のために日本国民が殺される

実は、政府は森下竜一教授が創業したアンジェスを含む医薬品メーカー4社に補助金を出している。研究開発に46億円、生産体制の整備に438億円の合計484億円という巨額の資金だ。ところが、それだけの財政資金を投入しながら、承認の目途が立っている国産ワクチンは、まったくないのだ。

海外では数か月という短期間でワクチンの緊急承認をしている。なぜ同じことが日本でできないのか。

私は厚生労働省の官僚の保身のためだと考えている。かつての官僚は給料がとても安かった。だから、クビになることを恐れなかった。クビになっても民間に転ずれば、逆に給料が上がったからだ。彼らの仕事の動機は、国を動かすことであり、だからこそ思い切った政策を打ち出すことができた。

ところが、大企業の賃金水準に合わせる巧妙な仕組みの下で、いまや官僚の待遇は、超一流企業並みになった。

しかも最近は官邸主導が強まり、自由に政策を打ち出せなくなった。官僚は自分を守ることに専念するようになったのだ。日本では天然痘ワクチンの接種で死亡や後遺症の事故が相次ぎ、1970年代には訴訟が起こされた。

森永卓郎さん (写真/共同通信)
森永卓郎さん (写真/共同通信)

1992年の東京高裁判決では、国が全面敗訴している。そうした事情もあって、厚生官僚は自分を守るため、慎重の上にも慎重を重ねてワクチン承認を遅らせる。その結果感染が広がって国民が命を落としても、慎重な審査を進めた官僚の地位は安泰だ。

そうした場合、本来なら官邸が責任を取る形で緊急承認を目指すべきなのだが、菅政権はそれをしない。新しいことを何もしない内閣だからだ。

実は、ワクチンが間に合わなくても、新型コロナ感染症を収束させる手立てはある。大規模なPCR検査の実施だ。

まん延防止等重点措置にともなう時短要請で飲食店に支払われる協力金は、売上高の4割で、中小企業の場合は、1日あたり4万円から10万円の範囲内となる。大阪市の例で考えると、申請のあった飲食店数は2万6000店だから、一店舗あたりの協力金を5万円と低く見積もっても、1か月の給付総額は403億円となる。給付の事務費を加えれば500億円を超えるだろう。

一方、大阪市民全員にPCR検査をして、陽性者を隔離する政策を採った場合はどうなるか。大阪市の人口は、275万人だから、一人あたりの検査費用を1000円とすれば、27億5000万円しかかからない。検査費用の1000円というのは複数の検体を混合して調べるプール方式の場合だが、個別検査でもソフトバンクグループが行っているPCR検査が2000円だから、その単価で計算すると、費用は55億円となる。

まん延防止等重点措置と比べてけた違いにコストが低いのだ。しかも、全員検査で陽性者を隔離した方が、効果が即時に、しかも確実に得られる。

なぜそうしないのかを私はずっと疑問に思っていた。そこで4月2日の「情報ライブミヤネ屋」に出演した際に、新型コロナウイルス感染症対策分科会委員を務める釡萢敏医師に質問した。釡萢氏はこう答えた。

「PCR検査というのは、必要なところにしっかりやるのが適切であって、感染の可能性が非常に低い人も含めて幅広くユニバーサルにやるという意見が大きな賛成を集めているわけではない。私自身も必要なところにしっかりやるべきだと考えている。感染の可能性が高いところを重点的にやらないとムダ打ちになってしまう。陽性者の隔離も全部がうまくいくわけではない」。要は、大規模PCR検査で陽性者をあぶり出すというやり方は、そもそも選択肢として考えていないということなのだ。

つまり、大規模検査でコロナを収束させようと思ったら、分科会のメンバーを総入れ替えすることを考えないといけないのだ。しかし、新しいことを何もしない菅政権にその意思はまったくない。