終活するより、日常を普通に生きたい
山田 セカンドオピニオンを受けに行ったがん研の先生にも、「がん治療はどんどん進歩している。粘り勝ちだから、粘りましょう」と言われました。それから1年以上粘ってきて、がんの自覚症状がないせいか、もう日常みたいになっているんですよね。ちょっとうまく言えないんですけど、死ぬ気がしないっていうか。このままずっといけるんじゃないか、みたいな気持ちになっちゃっていて。
下山 それが一番理想で、その状態をつくっていくのが治療の目的ですから、今の状態をできる限り継続させていくことが大事です。
山田 僕は、中尾彬さんが体調を崩されてから身辺をきれいに整理して亡くなったと聞いていたので、自分もそうありたいと最初は思ったんですが、本を整理しはじめた時点でイヤになっちゃって。自宅と事務所と倉庫にどのくらい本があるかもわからないから、「もういいや、家族に恨まれてもいいから放ったらかして死んでやろう」と開き直ることで気が楽になりました。
今の僕のように通いで抗がん剤治療を受けながら普通に生きていけるなら、なにも終活を急ぐ必要もありませんしね。粘り勝ちを目指して、終活する暇があるなら仕事を続けていきたいと思います。
取材後の様子(撮影/野﨑慧嗣)
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構成/樺山美夏 写真/野﨑慧嗣 山田五郎氏スタイリング/土屋大樹
見えない死神 原発不明がん、百六十日の記録
東 えりか
2025/10/24
2,200円(税込)
336ページ
ISBN: 978-4087817683
夫の突然の腹痛、そして入院。検査を繰り返すが、原因は不明。
ようやく診断がついたときには、余命わずか数週間。
「原発不明がん」とは、いったい何なのか?
第22回開高健ノンフィクション賞最終候補作
【各界から絶賛の声、続々!】
理不尽極まりない、まさに「見えない死神」。明日は我が身。震え上がりながら一気に読んだ。
――成毛眞氏(「HONZ」代表)
哀しみの底に沈みながらも、決して諦めない。検証し続ける。その圧倒的な想いの強さに胸うたれる。
――小池真理子氏(作家)
著者は、愛する人を「希少がん」で亡くすという個人的な体験を病の普遍的な記録にまで昇華させた。苦しみを同じくする人々や医療難民にとって必見の情報と知見がここにある。
――加藤陽子氏(歴史学者)
【本書の内容】
ある休日、夫が原因不明の激しい腹痛に襲われた。入院して検査を繰り返すが、なかなか原因が特定できない。ただ時間ばかりが過ぎ、その間にも夫はどんどん衰弱していく。
入院から3ヶ月後、ようやく告げられたのは「原発不明がん」の可能性、そして夫の余命はわずか数週間ではないか、というあまりにも非情な事実だった。
この「原発不明がん」とは、一体いかなる病気なのか?
治療とその断念、退院と緩和ケアの開始、自宅での看取り……。発症から夫が亡くなるまでの約160日間を克明に綴るとともに、医療関係者への取材も行い、治療の最前線に迫ったノンフィクション。