治療できるかどうか? 医師が判断するポイント

山田 昔からある抗がん剤以外の治療法として、オプジーボの他に注目されているものはありますか。

下山 今はまだ保険適応の範囲でできる治療はありませんが、今後、血液腫瘍で行われている免疫療法が固形癌にも使えるようになることが期待されています。

実は、私たちの体の中では毎日がん細胞が生まれているんですが、免疫がそれを退治しているからがんにならないんですね。逆に言えば、がんになってしまった人は、免疫のスイッチが入らなくなっている状態とも言えます。もし、このような状態の免疫細胞のスイッチを入れることができれば、風邪と同じようにがんも治ることになります。

こうした免疫のスイッチをいれる治療として、「カーティー(CAR-T細胞療法)」や「二重特異性抗体」があります。これらの治療によって、従来の抗がん剤では治らなかった悪性リンパ腫の方でも治るケースが出るようになりました。CAR-T細胞療法は強い副作用がおきる可能性があるため、5年前は限られた施設でしかできませんでしたが、現在は全国100施設以上でできるようになっています。

下山達氏(撮影/野﨑慧嗣)
下山達氏(撮影/野﨑慧嗣)

山田 スイッチさえ入れば、自分の免疫ががんをやっつけてくれる可能性があるわけですね。

下山 このような免疫療法がうまくいくかどうかの決め手は、やはり体力です。体力があるということは、免疫力があるということですから。

先日、ある学会で海外の有名なCAR-T細胞療法の先生が、「高齢者は何歳までCAR-T療法ができるのか?」という質問を受けたんです。すると、いくつかデータ的な説明をした後、「一番の決め手は、患者さんが診察室に入ってきて、椅子にパッと座ってパッと立ち上がれること。それができれば80歳でも治療します」と答えて会場が沸きました。

実際、免疫療法がうまくいくかどうかの指標に、歩行スピードが関係しているという論文もあるのです。

山田 僕は歩行速度がだいぶ落ちたんですよ。

下山 先ほど、山田さんが部屋に入って来られた時の動きを見ましたが、抗がん剤治療を続けているとは思えないほど、見た目が病気に負けていません。この「見た目の元気さ」というのは、医学的にも非常に重要なのです。かなり強い抗がん剤治療をしながら、お仕事もされているのもすごいことですから、ベースの体力が相当あるのだと思います。

山田 体力はともかく食欲は旺盛ですね。がんになって最初の頃は倦怠感や吐き気といった抗がん剤の副作用で食が細って少し痩せましたが、その後、食欲が回復して、今ではむしろ発症前より太りはじめているくらいです。

下山 食べられるということは、体力を維持するうえで非常に大切です。東さんのご主人は、腸閉塞で食べられない状態からスタートして、体力を奪われてしまいましたから。

 うちの夫は、もともと細かったんですけど、入院する1年ぐらい前から「食べても食べても痩せるんだよね」と言っていて。それで体力をつけるために激しい運動をしていたので、筋肉はすごくついていたんです。細いのにマッチョで、本人は体力に自信を持っていました。でも体重が落ちて痩せていったのは、がんの影響だったんですよね。