あなたは会社にとって「都合のいい人」になっていませんか?

先ほど私は、「役職はなくても仕事があり、まわりの人から頼られて仕事をしている」人に対して、「大丈夫ですか?」と疑問を投げかけました。

その理由は、いわゆる「いい人の罠」に陥っている可能性があるからです。

定年間近になっても、会社から必要とされるのはうれしいものです。後輩から頼りにされれば、自分もまだこの会社に貢献できると誇らしくもなるでしょう。現役の頃は部下に厳しい「鬼上司」と呼ばれていたのに、役職定年後に面倒見のよい「いい人」になったというケースもよく聞きます。

でも、少し立ち止まってみてください。今のあなたは、会社にとって「都合のいい人」になっていませんか?

仕事に必要なスキルはこれまでと変わらないのに、役職定年で手当ては減り、60歳以降のいわゆる「定年後再雇用」の場合は、給与そのものが大きく減額されているはずです。

給与体系は企業によりますが、ざっくり50代半ばの役職定年で3割が削減され、60歳定年以上の再雇用では、そこからまた5割減となるのが普通です。平均すると年収は300万円台でしょう。

「定年後は新入社員並みの年収」と揶揄される所以はそこにあります。再雇用時の条件が年収400万円台なら、かなりよいほうと言えます。

さて、この状況に一番満足しているのは誰でしょう。他でもない会社です。

少ない給与でしっかり働き、後進の指導まで買って出る「いい人」のあなたは、会社にとってまさに「都合のいい人」なのです。

でも、会社があなたの面倒を見るのは、せいぜい65歳まで。あと20年、ひょっとしたら30年以上、自分の面倒を自分で見なくてはなりません。

写真はイメージです(PhotoAC)
写真はイメージです(PhotoAC)

人事部、経営側の本音

人事部や経営側としては、シニア社員にはとっととお引き取り願い、若い社員を増やして、会社の平均年齢を下げたいのが本音でしょう。

かつての部下を直属の上司にするのは、「早く退職してください」という会社からの肩叩きの場合もあります。

しかし、役職定年で年収が7掛けになり、それがさらに半減する再雇用の定年延長者は経営者から見ると、ありがたい存在でもあるのです。

例えば、システム開発のプロジェクトを考えてみましょう。

顧客との価格交渉で、人件費をひとりあたり月150万円を切る攻防をしているとします。そこでサービスの品質を保ち、顧客の予算内に収め、基準以上の利益を出すには、こうしたシニア社員(エルダー社員)を組み入れることが不可欠です。

バリバリの戦力を新入社員並みの年収で使えることが、経営的にどれだけメリットがあるかは想像に難くないでしょう。

プロ野球のピッチャーにたとえると、かつて年間10勝し、年俸1億2000万円だった選手が40歳を過ぎ、年間5勝しかできなくなったけれど、年俸3600万円なら契約を勝ち取れるような話です。