値上げに対する客の反応は?

「ほとんど何も言われないですね。普通に同じように来てくれます。そうして、お客さんが『美味しい』って言ってくれる。それが一番ですね」

物価高騰に疲れた人々の、懐も、心も、胃袋も癒やす立ち食いそば。

たしかに、時代の救世主のように見える。だがその実情は、作り手が自らを削りながら、ギリギリで支えている世界だ。

熟練の職人たちが麺を茹で、天ぷらを揚げていく
熟練の職人たちが麺を茹で、天ぷらを揚げていく
すべての画像を見る

それでも「元長」は、今日も変わらず、打ち立て、茹でたて、揚げたてを出し続ける。2025年の年末。その一杯は、静かに、この時代を生きる人々を支えている。

取材・文・撮影/ライター神山