楽天の「18番」を背負う決意と矜持

田中は周囲が抱く理想や幻想と向き合った。だが、世間から認められず、36歳を迎えるかつての絶対エースの衰えを嘆き、非難する。

その苦悩、辛さは前田にも痛いほどわかる。ドジャースでは4年間で3度の2桁勝利を記録したが、ツインズに移籍してからは勝ち星が停滞する。

21年にはトミー・ジョン手術で知られる、右ひじの側副靱帯を再建する大手術を行った。なによりアメリカ最終年となる25年は、シーズン序盤でタイガースを自由契約となってから、メジャーリーグの下部組織であるマイナーリーグでプレーするという不遇を味わっている。

前田はこの現実について、飾らずに「悔しい」と言った。だからといって、感情の全てがマイナスで支配されているわけでもない。

「この年になってもう一度、ハングリー精神を味わえた。『悔しい』と思える自分がいたので、そこはすごくよかったんじゃないかなって思いますね。『同じような経験をしたくない』という気持ちで来年以降を過ごせますし、そのあたりを『いい経験になった』と言えるようにしたいです」

前田が楽天の入団会見で配布した自作のTシャツに描かれていたイラスト
前田が楽天の入団会見で配布した自作のTシャツに描かれていたイラスト
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野球界の過度な期待から目を背けず日本に帰ってきた田中と、悔しさを前向きに捉えて捲土重来を誓い日本球界に復帰する前田。

異なる歩みを経たふたりの「背番号18」が、楽天で交錯する。自分が付けていい番号なのか? 悩み抜いた末に前田が決断する。

「もしかしたら、ファンのなかには僕が18番を付けることによって、少し否定的な想いを持つ方がいるかもしれないんですけど。今すぐでなくとも、僕の野球に取り組む姿勢だったり、チームの勝利に向かって全力で戦う姿だったりをグラウンドで見てもらいながら認めてもらえるように頑張っていきたいと、付けることを決めました」

そして、前田が田中に連絡し、筋を通す。

「楽天で18番、付けることになったんだけど、いいかな?」

前田が相手を慮りながらやり取りを明かす。

「相談したら『いいよ』というか、そんな話はしました」

楽天の「背番号18」の格式を高めた男は、巨人に移籍した25年に日米通算200勝の偉業を成し遂げた。通算165勝を記録する前田にとっても、決して不可能な数字ではない。むしろ、田中の達成によって奮い立つ。

25年、巨人で日米通算200勝をあげた田中将大
25年、巨人で日米通算200勝をあげた田中将大

「もちろん刺激をもらいましたし、嬉しかったです。彼の背中を追いかけてきたので、『自分も』と頑張らないといけないですね。まだ少し遠い数字ですけど、200勝というのは僕自身、モチベーションになるので、そこは目指していきたいです」

前田のアイデンティティ。野球への取り組みと実績が認められなければ背負うことを認められない背番号は、日本球界復帰となる球団にとっては聖域でもある。

「楽天の18番」を付けるにふさわしいピッチャーになる――。26年シーズン。前田が全力で腕を振る理由としては、申し分ない。

取材・文/田口元義