お年玉を3~4割増額するべき理由

この問いについて、ファイナンシャルプランナーの金子賢司氏は、感覚論ではなく、数字で考える必要があると指摘する。

「現在のお年玉は、10〜15年前と比較すると、3〜4割程度の増額をしなければ、子どもに当時と同等の体験をさせることは難しいと言えます」

その理由は、子どもが日常的に買うものの値段が、想像以上に上がっているからだ。先に挙げたガリガリ君やチョコボールに加え、チョコレート菓子は原材料のカカオ豆高騰の影響を受け、2024年だけで4〜47%の値上げが行なわれた商品もある。飲料やスナック菓子で、値上げや内容量の減少は、もはや珍しい話ではない。

「総務省の消費者物価指数(2024年平均)は、2020年を100として108.5です。ただし、先に挙げたガリガリ君やチョコレート菓子の値上げ率はこの水準を上回っており、子どもが買う商品ほど値上げの影響を受けやすい傾向がうかがえます。

こうした状況を踏まえると、お年玉の額面を据え置くことは、子どもにとって『受け取る喜びの目減り』を意味します。同じ金額をもらっても、買えるお菓子の数は確実に減っているのです」(金子氏)

2016年時の日本のお菓子売り場
2016年時の日本のお菓子売り場

具体的には、これまで3000円を渡していた場合は4000円前後、5000円なら6500円前後が、「同じ体験」を維持するひとつの目安になるという。

ただし、金子氏は「必ずしも全員が増額すべきだとは限らない」とも強調する。

「渡す側の家計も、同じように物価高の影響を受けています。食費や光熱費の上昇で余裕がない家庭も多く、親戚の子どもが多ければ、3〜4割の増額は総額で見ると大きな負担になります。無理に相場を引き上げる必要はありません」

むしろ金子氏は、金額を据え置く選択にも意味があると語る。

「『去年と同じ金額なのに、買えるものが減ったね』と子どもに伝えれば、物価と購買力の関係を学ぶ貴重な金融教育の機会になります。『なぜ値段が上がるのか』『同じお金でも買えるものが変わるのはなぜか』を一緒に考えることで、お金の価値を実感させることができるはずです」