本屋が減る本当の理由3つとは?

私が出版界に入ったのは1980年代ですが、その頃から変わらず言われてきたのが「流通側の利益幅の低さ」と「書籍注文品の遅滞性」そして「返品率の高さ」あれから40年以上経っても、これらの課題に何らの解決策の糸口さえ見出していないのが日本の出版界の現状です。この課題の解決を妨げている「本屋を苦しめる三大要因」をここでは簡単に触れておきます。

読者には見えにくい、本屋を苦しめる「3つの鎖」
⒈ 再販制度:本屋は本の値段を自由に決められない鎖。
⒉ 委託制度:本の返品が増え出版社の収益を圧迫し、本屋に利益を渡せない鎖。
⒊ 雑誌発売日協定:地域ごとに各雑誌の発売日が厳守される協定の鎖。


これらは、まさに古い制度に固執する日本社会そのものの姿でもあります。出版界の隆盛期には、これらの制度は一定の機能を果たしていました。しかし時代が変わっても仕組みは変わらず、今では本屋を縛る「鎖」と化しています。

「再販制度」「委託制度」「雑誌発売日協定」は、まさに日本社会における「年功序列」「終身雇用」「横並び主義」の失われた30年の日本社会との相似形です。いずれも過去の成功体験に根ざし、制度疲労を起こしながらも改革されず、現場だけが疲弊していく昔からの出版界の3つのビジネスモデルです。

※制度疲労:当初の目的が時代に合わなくなり機能不全を起こしている制度のこと。

街の書店の一角(写真はイメージです) 写真/shutterstock
街の書店の一角(写真はイメージです) 写真/shutterstock
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文/小島俊一

『街の本屋は誰に殺されているのか?』(日本経営センター)
小島俊一
『街の本屋は誰に殺されているのか?#1』(日本経営センター)
2025年11月4日
1,760円(税込)
176ページ
ISBN: 978-4910017846

本書は、日本で街の本屋が
急速に消えている理由を探る。

戦後の出版界は
再販・委託制度などに守られ発展したが、
構造を変えられず衰退。

1996年に2万5000店あった本屋は
2023年に7000店を下回った。

他国では維持・微増しているのに
日本だけが急減している。

読書離れではなく雑誌市場の崩壊と
構造的問題が要因である。

本書は歴史的背景と海外比較、
現場の成功事例を通じて、
出版界の制度疲労を明らかにし、
本屋を文化と知の拠点として再定義、
未来に残す意義を問い直す。

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