自分の女性的な部分を呪う瞬間がある

──映画では自殺した莉花のルームメイトだった杏菜と、莉花の幼馴染の栞が登場します。最初の出会いは緊張感があり、ふたりの対立が描かれていくのかと想像しましたが、まったく違う展開が魅力的でした。

編集したものを見たときに、杏菜と栞が大人になっても連絡を取り合っていそうな手触りの関係性になっていたのは、個人的に嬉しかったですね。それは、演じた美絽さんと池端杏慈さんのおかげだと思います。

──女の子の集団を描く物語は、時としてドロドロしがちです。

女の子同士って、周りが思っているよりもさらっとしているし、意外とドライだよなということは実体験として感じていて。もちろん価値観が合わずにぶつかることはありますが、その後は「あなたはあなた」、「私は私」と認め合う頭のよさみたいなものがあると思うんです。女性のそういう部分は魅力的だなと思います。

女性監督が撮る映画を見ていても、女性のキャラクターをドラマティックに描きすぎていないというか。意外と冷静だったり、あまり感情が見えてこなかったりして。個人的にそういう作品に惹かれていたことも影響しているかもしれません。

杏菜(左)の母を演じた河井青葉(右)©2025 BITTERS END/CHIAROSCURO
杏菜(左)の母を演じた河井青葉(右)©2025 BITTERS END/CHIAROSCURO

──杏菜がフラワーアレンジメントをする母親に対し、「お母さんなんて若さ失って楽しみもなくなって、花に慰めを求めてるだけでしょ。バカみたいな人生」と言い放つシーンが衝撃的でした。

母親役を演じられた河井青葉さんも、現場で「結構きついです」とおっしゃっていましたね(笑)。あれは自分自身が抱いていた感情を投影しています。10代の頃って、自分の女性的な部分を呪ってしまうことがあると思っていて。

お花を見てきれいと思う感覚とか、女の子っぽいかわいらしいアイテムとか、そういうものに対して反発を抱いていました。過去の自分の気持ちを思い出して正直にセリフを書きました。

 ──莉花が自殺をした理由はメインのテーマではありませんが、そのひとつとして描かれる父親の存在も印象的です。少女から大人になる過程の中で、自分が性的対象として見られ始めることへの戸惑いや嫌悪感は、多くの人が経験してきたことだと思います。そこに対するメッセージも込められていると感じました。

おっしゃる通りです。その反動で女性的なものへの反発が生まれると思いますし、一番近い女性である母親に対して「気持ち悪い」と思ってしまう瞬間がある。今はそんなことは思いませんが、私も社会の女性嫌悪的なものを内面化してしまった時期がありました。でもその時期を通って、次のプロセスに行くということを見せたいという思いがありました。

そうでないと女性性を呪ったまま、大人になってからもずっとモヤヤを抱えてしまう気がします。10代の頃に抱く複雑な感情を乗り越えることが、本当の意味で自分を受け入れることになるのかもしれません。