「夕やけが見えない商店街になってしまうのであれば反対だ」という声も

荒川区と台東区の境界に位置し、1990年に一般公募によって愛称が付けられたという「夕やけだんだん」。そもそも、いつ、どのような経緯でマンション建築が始まったのか。ある台東区議は次のように話す。

「商店街の何人かの方から『立ち退きの話が出てる』と聞いたのが、今から3年ほど前だったかと思います。私もマンションの住民説明会に参加していたのですが、私の活動拠点が建設予定地から離れているという理由で、途中からは説明会の通知も来なくなってしまいました」

同区議によれば、計画が立ち上がってから地域住民への説明や折衝などを経て、「当初の予定よりも1階層低くする」「マンションの1階にはお店が入るような造りにする」などの方針で最終的には合意に至ったという。

「夕やけだんだん」階段の途中から見た建設中のマンション(撮影/集英社オンライン編集部)
「夕やけだんだん」階段の途中から見た建設中のマンション(撮影/集英社オンライン編集部)

「マンションに最も隣接しているのが谷中銀座商店街の方たちですが、商店街の総意としては反対の表明はありませんでした。ただ、商店街にとっては『夕やけだんだん』が売りであり、その夕やけが見えなくなってしまうのであれば反対だ、という声を上げていた方もおられます」

さらには、二つの区が隣り合うという地域特有の事情も絡んでいるという。

「台東区の谷中地区では『地区計画』を定めており、建物の高さに制限をかけています。ですがマンション建設地は荒川区であり、台東区で定めた制限にはかかりません。台東区が『地区計画』を策定する際に、荒川区に対して『高さ制限も含めた地区計画を作るほうがいいのではないか』という投げかけはしていました」

右側が「夕やけだんだん」、左側の「七面坂」は台東区に属する二叉路(撮影/集英社オンライン編集部)
右側が「夕やけだんだん」、左側の「七面坂」は台東区に属する二叉路(撮影/集英社オンライン編集部)

結果的に荒川区では地区計画の策定には至らず、マンション建設が始まったという。

「法令があるために行政は縛りがかけられません。荒川区や台東区だけの問題ではなくて、東京都全体で高い建物や再開発の問題を考えなければいけないと思います」

「七面坂」の立て札には「台東区」の文字が(撮影/集英社オンライン編集部)
「七面坂」の立て札には「台東区」の文字が(撮影/集英社オンライン編集部)

荒川区で長年活動する区議も次のようにため息をつく。

「区は観光スポットの一つに『夕やけだんだん』を挙げており、区としても規制をかけてマンションの高さ制限をすべきではないかというお願いはしました。もっと景観を守ったり、住民の暮らしや問題をしっかり見たりするべきだと私どもは考えています。

建設中のマンションは1戸あたりの価格帯が1億1000万円から2億円を超えるようですが、そういうあり方が本当にいいのでしょうか」