日テレ退社時に葛藤した、配信での戦い方
──約20年在籍された日本テレビを退社し、フリーになられてから3年。動画配信サービスやSNSで次々と人気コンテンツを生み出していますが、テレビ出身のクリエイターとしての強みはどこにあると感じていますか?
橋本(以下、同) 配信プラットフォームの場合、どうしてもテレビでは観ることができない「きわどい笑いを狙う」ということが多くなってくると思います。誰かがめちゃくちゃ追い込こまれるとか。もちろんそれはそれでひとつの正解だと思いますが、自分の性格的には向いていないと思っていて。
僕が作ってきた『有吉ゼミ』や『有吉の壁』、『マツコ会議』などの番組は、興味のある出演者の本質を掘り下げていくスタイルだったので、「自分に配信の戦い方があるのか、配信コンシャスになれるのか?」といった葛藤はありました。会社を辞めたときはやっぱり怖かったし、悩みました。
それでも、たくさんの人に観てもらわなければいけないゴールデンタイムの番組を経験してきたからこそ、誰でも観られるフレームの中でお笑いの間口を広げることができるのではないかとも感じていて。全世代が楽しめるコンテンツを作ることは意識しています。
テレビマンの強みは、視聴者に何が求められているのかというマーケティングができること。視聴者がどういう環境で視聴するのかを理解し、多くの人に楽しんでもらうため一生懸命コンテンツを作る。そして毎日出る視聴率などのデータを参考に細部を修正をしていく。そのスピード感こそが、テレビマンの武器だと思います。それは地上波テレビ以外の配信コンテンツを作る上でも重要で、テレビで培ったスキルをさらに磨き、生かしていくことが大事になっていくだろうと感じます。
──Prime Videoで昨年配信された『最強新コンビ決定戦 THEゴールデンコンビ』は、実力派芸人たちが1日限りのオリジナルコンビを結成し、即興コントの頂点を決めるお笑いサバイバル・バトルです。Prime Videoというプラットフォームで制作する上で意識したことは?
地上波テレビのゴールデンタイムは、毎日3000万人の視聴者がテレビの前にいて、どの番組がおもしろいのか選んでくれている状態です。それはとても幸せなことなのですが、やっぱり配信となると、わざわざPrime Videoを立ち上げて「これを観よう」と思ってもらえるコンテンツを作らなければいけない。そのきっかけになるのがYouTubeやTikTokなどSNSでのPRだったりもするわけで。
画で惹きつける強烈なビジュアルを作るために、まずはせり上がってくるセットを作りました。お願いしたのはフジアールの鈴木賢太さん。フジテレビの伝説のバラエティ番組のセットを作ってこられた方です。めちゃくちゃリスペクトがありましたし、「一度は賢太さんにセットを作ってほしい」と思っていました。舞台がせり上がる演出や巨大なLEDパネルが並ぶセットなど、ショーアップを極められたと思います。
芸人さんがコンビを組みたい人を指名する設定も大きいですね。「この人が相方だったら勝てるんじゃないか」と惚れ込んで指名をするわけですし、逆に指名された側は「期待に応えることができるのか」というプレッシャーを抱える。最初から人間ドラマが生まれる構造になっているんです。
観客の方が一番おもしろくなかったコンビを投票し、1組ずつ脱落していく演出は制作する上での肝としてこだわりました。残酷ではありますが、芸人さんがその分「絶対に負けられない」とムキになるはず。逆に最下位にならなければ残れるわけで。全員を笑わせられなくても、2割の人に強烈に刺さったら最下位にならないという考え方もできる。そこに戦術が生まれる余地がありますよね。そういった構造を配信らしい仕掛けとして意識しました。














