「1億円で観たことのないセットを作ってください」
──Prime Videoだからこそ実現できたことはありますか?
ひとつは時間をかけて番組を作れたこと。元テレビ朝日のプロデューサーさんがAmazonに行かれたタイミングで、ふたりで「何かおもしろいことをやりたいですね」と企画を立ち上げたのが2023年1月でした。何度もディスカッションをして、アイデアを積み上げながらコンテンツを作っていくのはすごく大事なこと。
どうしてもテレビだと企画してから2ヶ月後には放送しなければならないなど、制作のスパンが短いんですね。どちらがいい悪いではなく、まったく違う競技と捉えています。今回は「1年後にどういう収録にしよう」と考えられる贅沢さがありました。
もうひとつは、予算をかけられたこと。Prime Videoのすごさって、ひとつのコンテンツにちゃんと予算を投下して「観たことのないものを作ろう」としている。これは結構、エンターテインメントの原点だと思うんです。
もちろん予算がすべてではないけれど、予算をかけたから観られるものもある。そこは配信プラットフォームの強みだと思いました。セットを発注した賢太さんに「1億円で観たことのないセットを作ってください」と言えたのはやっぱり嬉しかったですし、彼もめちゃくちゃ肩が回ったと思います。
──セットに1億円かけられたということは、全体の制作費もかなり大きかったことが予想できます。広告収入を元にしたテレビ業界のビジネスモデルは過渡期に来ています。出演者や制作者などの人材も、今後“稼げる”配信プラットフォームへ流出していくのではないでしょうか?
テレビ出身のクリエイターが仕事を決める時に、報酬を基準だけに選ぶことはあまりないと思います。「おもしろいことがやりたい」という思いが何よりの動機になるのかなと。
そもそも「稼げそうという理由だけで、配信プラットフォームの仕事をやりたいと思っても、そんな甘い世界ではないと思います。配信コンテンツの世界では圧倒的な強度が求められ、「どれだけ心に響くコンテンツを作れるか」が重視されるので、見たことないものを作るという情熱が何よりも大切だと思います。
コンテンツでも、『侍タイムスリッパー』や『カメラを止めるな』など、低予算でも大ヒットする作品があるわけですよね。お金をかけることが唯一の勝ち方ではない。そう考えると、エンターテインメントの世界はシンプルな資本の原理に寄らないと思っています。ワクワクできる環境にこそ才能が集まってくるし、テレビ局にはテレビ局なりの戦い方がまだまだあると思っています。














