国民に来年4月からの大増税や負担増を強いる一方で

今の自民党を見渡してほしい。仮に歳費が増額されたとして、最も甘い汁を吸うのは誰か。それは永田町に長く居座り、既得権益の上に胡座をかく長老議員たちではないか。

高市首相がこの増額を認めることは、彼女を支える党内の古参議員たちへの「利益供与」であり、彼らの怠惰を助長し、国会機能を停滞させるための燃料を投下するに等しい行為だ。

日本の国会議員は、すでに世界的に見ても極めて高水準の報酬を得ている。歳費だけでなく、使途の透明化が叫ばれながらも温存された月額100万円の調査研究広報滞在費(旧文通費)。JRの無料パスや航空券引換証、数々の特権。

これらはすべて、彼らが国政という重労働に専念するための環境整備として用意されたものだ。その理念自体は否定しない。しかし、すでに十分に満たされたコップにさらに水を注いでも、それは溢れ出して床を濡らすだけである。

今回の5万円増額という話は、金額の多寡の問題ではない。自民党政権のモラルの欠如と、構造的な欠陥の問題だ。

成果やパフォーマンスに対する厳密な評価なしに、また、国民生活の困窮という現状を無視して、お手盛りのルールで固定給を引き上げる。それは、経済学的に見れば「サボタージュへのインセンティブ(動機づけ)」を与える行為に他ならない。

物価高に苦しむ国民に来年4月からの大増税や負担増を強いる一方で、自らは科学的根拠に基づけば「怠惰を招く」ことが確実な賃上げを行う。そのような政権の欺瞞を、我々は決して看過してはならない。

政治家が買うべきは自身の余暇ではない。この国の未来への責任であるはずだ。

文/小倉健一