給料が上がった議員たちは仕事をサボるようになった

2012年、トルコではある特殊な法改正が行われた。「議員になる前に別の職業につき、すでに引退資格を持っていた議員」に対してのみ、年金ボーナスという形で給与を大幅に引き上げたのである。

具体的には、大統領の給与の18%に相当する額が上乗せされた。一方で、そうではない一般の議員の給与は据え置かれた。

つまり、同じ議場にいながら「給料が突然上がったグループ」と「変わらなかったグループ」が明確に分かれたため、報酬の増加が彼らの行動にどのような変化をもたらしたかを比較検証する絶好の機会が生まれたのだ。

トルコの国会(写真/shutterstock)
トルコの国会(写真/shutterstock)

結論から言おう。給料が上がった議員たちは、働くようになったのではない。彼らは仕事をサボるようになった。

論文の中に示されたデータは、残酷なまでに人間の本性を、そして今の自民党議員たちの未来の姿を予言している。以下にその内容を引用する。

「差分の差分の枠組みにおいて新法によって引き起こされた総給与の変動を利用することで、我々は給与の増加が退職したMP(国会議員)のパフォーマンスに悪影響を及ぼしたことを見出した。

特に、これらのMPの全体的なパフォーマンスは、新法によって引き起こされた給与の増加の結果として、標準偏差の12.3パーセント低下した。この発見は、多数の仕様検定に対して頑健である。

さらに、補助的な分析から得られた結果は、MPがパフォーマンスを低下させるメカニズムの1つが欠席主義であることを示唆している」

給料が上がった結果、総合的な仕事量は統計的に有意に低下

給料が上がった結果、彼らの総合的な仕事量は統計的に有意に低下した。具体的には、議会での演説回数が5.6%減少し、発言した単語の総数は8.7%も減少した。

さらに、国会議員としての職務の根幹である法案の下書きへの関与(共同署名)に至っては、9.0%も激減している。

これは単なる誤差ではない。経済学には「弾力性」という言葉があるが、この研究では、給与が10%上昇すると、議員の努力は約16%(0.4標準偏差)低下するという計算結果が導き出されている。

つまり報酬を積み上げれば積み上げるほど、反比例して議員たちの働きは鈍化していくというわけだ。なぜこのような現象が起きるのか。中学生にもわかるように例えるなら、こういうことだ。