辻元清美氏のXが波紋
仮に中国が台湾に侵攻し、米国がそれを防護しようとしたら、在日米軍基地が攻撃される可能性が高い。だが、歴代の総理はどんな状況が存立危機事態にあたるかの線引きはあえて曖昧にしてきた。
「戦略的に曖昧にする」ということは政府や自衛隊の最高指揮官である総理大臣に一定の裁量を与えることにもなるだろう。個別具体的な状況によって判断をすることになるからだ。
その意味では、岡田氏は曖昧な答弁に「不満だ」と言いながら、具体的な答弁を引き出したら「驚いた」「まずい答弁だと思った」と言い切る。さらに「発言の撤回」まで望んだというのだからあきれるしかない。
立憲民主党のねじ曲げはこれで終わらない。辻元清美参院議員は自身のXに次のように投稿。
「高市答弁の『台湾有事は日本有事』は台湾から日本が援助要請を受けて集団的自衛権を行使するパターンのようだ」などと投稿。
しかし、高市総理は中国の侵攻に抵抗する台湾軍に自衛隊が加勢するというようなことはまったく、ひと言も言っていない。むしろ、「米軍が来援し~」とアメリカを名指ししている。
日本が想定する「台湾有事」での集団的自衛権の行使する対象は台湾ではなく、台湾を助けるために参戦する米国だからだ。
立憲民主党と他の野党では質問の質にも明確に差
台湾有事を想定しているという防衛省幹部も「米国が介入しない状況で日本が単独で台湾に集団的自衛権を行使する想定を日本政府として準備したこともシミュレーションしたこともない。
当然、高市総理にもブリーフしていないので念頭にはない。なぜ辻元氏はあんなありえないことを勝手に投稿するのだろうか。あれこそ中国に誤解されて怒らせるだけだろう」と首をかしげる。
今回の国会では立憲民主党と他の野党では質問の質にも明確に差があった。立憲と言えば、岡田氏や大串氏に限らず、蓮舫氏は、旧安倍派の政治資金収支報告書の不記載問題を抱えながら官房副長官に抜擢した佐藤啓氏について、その理由を再三、高市総理に追及して質問時間を使い続けた。他にも金や不祥事などの追及型が多かった。
同じ野党でも公明党の岡本三成政調会長は500兆円の「ジャパンファンド」の創設を提案するなど前向きな総理答弁を引き出そうとした。国民民主党や参政党も経済政策などで「提案型」が目立った。
公明党は早速、子ども1人2万円の現金給付を政府・与党に要求して呑ませた。公明は国民民主と接近して企業団体献金の規制法案なども共同提出を目指している。対する立憲は公明や国民民主など他の野党からは距離を置かれがちだ。
「どの国のためにやっているんだ」
自民党のベテランはいう。
「少数与党では野党にも政策実現の機会がある。追及一辺倒の立憲型は明らかに時代遅れだ。とくに外交や安全保障関係に大きなマイナスを与えるような質問をして、さらに撤回を求めてくる。どの国のためにやっているのだろう」
立憲民主党には旧民主党時代にも前科がある。2016年だった。文部科学大臣経験者の中川正春氏が衆院予算委の前の党の会合で「安倍首相の睡眠障害を勝ち取りましょう」と発言。
安倍総理の耳にも入り、激怒させた。国会で「睡眠障害に悩む人にとって大変な発言だ。しかも、私をそういう状況に陥れようと考えているんですか、民主党のみなさん。これは人権問題だ。私にだって家族がいる。『お前を病気にしてやろう』と民主党で決意している。文科相をしていた方が発言しているというのは、非常に驚いた」とまくしたてたことがある。
こうした「陥れる」という国会質疑はやがて立憲民主党が「存立危機事態」に陥ることにならないか。他の野党からも距離を置かれ出していて、むしろ心配になってくる。
文/長島重治













