そういうのがあっても面白いんじゃないか、程度

ただ、「子供は親とは別人格の他人」という考え方は変わっていません。

親が子供の世界にいられるのは、いいとこ8歳、9歳まで。それ以降は外の友達同士で作る「あっちの世界」の住人になってしまう。

これは、親には止められない。子供はいつか親から離れていくし、目の前からいなくなる。制御はできません。やっぱり別人格の他人なんです。

写真はイメージです(PhotoAC)
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だから僕は、子供が将来どんな仕事に就こうが一向に構わないし、もし人を殺しちゃったら殺しちゃったで「ごめんなさい」としか思わない。

そういう意味で僕は、子供を愛してはいるけど、過剰な期待はしていません。夫婦が共同生活をしていく中でのスパイスくらいに考えています。「そういうのがあっても面白いんじゃないか」程度。

だから、親に向いていない人というのが明確にいる、と思うようになりました。

たとえば、自己愛で子供を育てている人。あるいは、自分のコンプレックスを子供の人生で解消しようとする人。自分が就けなかった職業に就かせようとしたり、行けなかった学校に行かせようとしたりする人。

子供にたんまり時間やお金をつぎ込んだのだからと、思い通りに育たなくて苛立ったり、いつまでも子離れできない人がいるじゃないですか。彼ら、彼女らは、子供を育てるということについての理解がないまま、子供を作っちゃった。正直、バカなんじゃないかと思います。

いいとこ10年、15年くらい面白いってだけですよ。子育てなんて。

文/稲田豊史 サムネイル/PhotoAC

『ぼくたち、親になる』(太田出版)
稲田豊史
『ぼくたち、親になる』(太田出版)
2025/10/8
1,980円(税込)
256ページ
ISBN:978-4778340537

残酷で切実!
超少子化時代に耳を貸すべき 
父親たちの不都合な本音。 
Web連載時に賛否両論巻き起こした話題沸騰のルポルタージュ、待望の書籍化! 

ある男性は「自分の職業にとって、子育てはハンデだ」と言った。 
ある男性は「子供が生まれた時点で妻への愛情はゼロになった」と言った。 
ある男性は「人間は子供を作って当然。作らない夫婦には問題がある」と言った。 
ある男性は「少子化の原因は“女性の幼稚化”だ」と言った。 
ある男性は「キャリアの天井が見えたから子供を作った」と言った。 
ある男性は「実験のために子供を4人儲けた」と言った。 
ある男性は「神様、どうか子供ができませんように」と祈った。 
ある男性は「子供がいる人といない人では、根本的に理解し合えないのではないか」と逆質問してきた。 
ある男性は「自分の気を狂わせないために、“変化し続ける”対象として子供が必要だった」と語った。 

令和の日本で子供を持つ/持たない男たちのビターな現実が今、白日の下に晒される。 

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