僕が作ったのは「ファンビジネス」

世間にセンセーションを巻き起こした『LEON』『Nikita』だが、もちろん批判がなかったわけではない。

「編集部に電話があったりしましたよ。『うちの旦那がLEONを読み始めてから浮気を始めた。どうしてくれるんだ!!』って」

岸田さんの答えはこうだ。

「スタッフに『その奥様に「Nikita」を送ってあげなさい』って。一緒にギラギラになればいいじゃないですか」

取材中も岸田節が炸裂していた 撮影/佐藤靖彦
取材中も岸田節が炸裂していた 撮影/佐藤靖彦
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このように、読者からの反響は、時に予想を超えるものだった。

「でもね、会社帰りに新橋の居酒屋で『お前もちょいワルだね』なんて言い合っているオヤジたちは、実際には買ってくれてないわけですから」と岸田さんは笑う。

だが、本当に雑誌を支えたのは、確実に買ってくれる9万人の読者だ。

「ちゃんとお金を持ってる人たちが定期購読してくれている。私は結局、ものすごく売れる雑誌を作ったのではない。ファンビジネスを作ったんでしょうね」

20年経った今も、『LEON』は続いている。そして岸田一郎という名前は、伝説となった。

後編では、令和時代の「次にくる大人の男性像」や「メディアのあり方」について聞いた。 

取材・文/木原みぎわ 撮影/佐藤靖彦