自民維新内からは外交官の追放を求める声
高市総理や木原官房長官も決定的な対立は望んでいないという。中国との貿易総額は30兆円を超えるなど影響が大きすぎるからだ。
ただ、着地点がみえていないのも事実のようだ。歴史的に中国と深いパイプをもった公明党が連立を離れた。自民党にも二階俊博元幹事長のような中国通は引退して見当たらない。高市政権は高市総理も木原官房長官も台湾通だ。
「一歩間違えば戦争にだって発展しかねない。議員外交のパイプが細っていて、エスカレートしていくと武力衝突に発展しかねない」
総理経験者の一人は現在の日中関係を深刻な状況とみている。
加えて、中国の薛剣(せつけん)駐大阪総領事のSNS投稿も事態を複雑にしている。高市総理に対して、「汚い首は斬ってやる」と投稿。自民や維新内では「(外交官を国外追放する)ペルソナ・ノン・グラータを適用しろ」という声が高まっている。
「高市総理は発言の撤回は絶対にしない」
自民党内にもかつての二階氏のような「中国通」の大物がいなくなり、過激な発言が増えているのが現状だ。
頼みの綱である米国も怪しい。トランプ大統領は1期目では、習近平氏に対し、「台湾侵攻をしたら北京を爆撃する」と伝えたと言われている。自身が2期目の選挙前に支援者の集会で打ち明けた音声をCNNが入手して報道したことがある。
真偽は別にして自己愛の塊でしかないトランプ氏は中国にも強気の姿勢が自慢だった。だが、2期目となる先月の米中首脳会談では「台湾については話していない」と極めて慎重だ。レアアース禁輸など中国に経済カードを握られて、世界最強の軍事国家も何とも頼りないのが現状だ。
米国が頼りないだけではない。高市氏には、政権内にも自民、維新の与党内にも、中国との連絡役を買って出てくれるようなパイプ役がいない。外務官僚だけが頼りというなかで野党の挑発にのってしまった。
高市氏が突破口にしようとしたG20での李強首相との会談も中国が拒否した。側近の一人は高市氏の考えをこう打ち明ける。
「高市総理は発言の撤回は絶対にしない。いつ日中衝突が起こってもおかしくないが、撤回したら中国を助長させてしまうと考えているからだ。だから、中国が仕掛ける情報戦に辛抱強く付き合っていく。アメリカと連携しながら同志となる国々に日本のスタンスを説明する。唯一の救いはいまのところ高止まりしてくれている内閣支持率だけだ」
文/長島重治 写真/共同通信社













