外務省幹部「立憲の挑発にまんまと引っかかった」
北朝鮮の核ミサイル開発や中国の海洋進出など東アジアの軍事的な緊張が高まる中で、安倍総理が憲法解釈の変更による集団的自衛権の導入にこだわった。
北朝鮮、中国、そして台湾、日本周辺で有事の際には「日本もアメリカと一緒に戦う覚悟を示さないと日米同盟ももたない」というのが安倍氏の信念だった。そんな安倍氏を「政治の師」とあおぐ高市氏だ。
「立憲民主党の挑発にまんまと引っかかってしまった。総理になる前の総裁選のテレビ討論と総理大臣としての国会答弁では意味がまったく違う。しつこく聞いたほうも聞いたほうだが、踏み込みすぎた」と外務省幹部は嘆く。
中国にとって「台湾統一」は悲願中の悲願だ。決して踏んではいけない虎の尾を野党に詰められて踏んでしまった。
まして高市氏は10月31日に日中首脳会談を実現させた直後だった。このタイミングについても、外務省幹部は「最悪のタイミングだ。習近平のメンツを潰されたと中国政府幹部は思ったはずだ。しつこくさら問いした野党もあんまりだ。国益というものがまったく分かっていない」と吐き捨てる。
日中外交関係者は「この6日間に習近平指導部の中枢から何らかの指令」
それでも中国は当初は様子見だった。7日に高市氏が「台湾有事」を発言したが、中国メディアがかき立てて、中国政府が反応したのは6日後の13日だった。
この日の深夜に中国外務省は駐中国の日本大使を呼びつけて抗議した。日本も翌14日には外務省が中国大使を呼びつけた。双方の応酬が始まった。
13日からは中国の機関紙「人民日報」なども一斉に高市総理の発言の批判を始めていて、日中の外交関係者は「この6日間に習近平指導部の中枢から何らかの指令が下りたのだろう」とみている。
中国は14日にはさらにカードを切ってきた。
中国外務省による「日本への渡航自粛の呼びかけ」だ。今年1月~9月の訪日外国人観光客は3100万人に上る。そのなかで中国からは2割強の750万人。国・地域別ではトップで、コロナ禍前の2019年には国内消費額1兆8千億円に上っている。
「完全な経済を使った脅しじゃないか。いつものことだが、『戦狼外交』ってやつだ。これのどこが『戦略的互恵関係』だっていうんだ」
自民の外務大臣経験者は憤る。ただ、外務省幹部は別の見方を示す。「『自粛』にとどめたのは中国も国際世論など動向をみているのではないか」と指摘する。
あくまで「自粛」なので「いつでも振り上げた拳を下ろせる。中国もいまは経済が良くない。米国との対立もあって、日本とどこまで本気でやりあうか、腹の探り合いだ。これが機関決定だったら、習主席が本気だってことだろうけどね」と冷静に状況をみている。













