「大企業に就職すれば安泰」神話の崩壊…リーマンショック後、必要とされる「稼ぐ力」の強力な原動力となる能力とは
「大きな企業に入れば将来は安泰」そんな風潮を誰しもが耳にしたことがあるだろう。しかし今となってはそれは幻想かもしれない。現代社会を生きる我々にとって「働く」とはどのような意味合いを持つのか。
元ゴールドマンサックスで作家の田内学氏の書籍『お金の不安という幻想 一生働く時代で希望をつかむ8つの視点』より一部を抜粋・再構成し、現代人の働くことに対する意識の変化を紐解く。
変化するお金への意識と時代の空気#2
「稼ぐ力」の磨き方――仕事から「為事」へ
この神話は、裏を返せば「新卒でいい会社に入らなければ、がんばっても報われにくい」という厳しい現実でもあった。それが崩れることは、むしろ歓迎すべき変化だろう。
リクルート・エージェントの調査によると、「前職と比べ賃金が1割以上増加した」転職者の割合は、2024年は36%に達し、リーマンショック後からおおむね増え続けている。
これは、自営業的な働き方が選べる社会になりつつあることを示している。一つの会社にしがみつかなくても、価値を社会に提供できれば、その対価を得られるのだ。
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文豪・森鷗外は、「しごと」という言葉を、「仕える事」を表す「仕事」ではなく、自ら主体的に「為る事」として、「為事」と書いた。本来、働くこととは、誰かに仕えるのではなく、自分の力で価値を生み出すことだ。
長らく社会では「役に立つこと」と「稼ぐこと」が分断されていた。「自分はどうやって役立てるのか」を真剣に考えても、「お金の不安」がなかなか減らない社会だった。
だが今、人手不足や安泰神話の崩壊を背景に、「役に立つこと」をすれば「稼ぐこと」につながる社会に戻りつつある。
そして、「誰かの役に立ちたい」という願いは、単なる稼ぐ手段を超えて人を動かす強力な原動力となる。そのために求められるのが、周囲のニーズを敏感に感じ取る「観察力」だ。
お金の不安という幻想 一生働く時代で希望をつかむ8つの視点
田内 学
2025/10/7
1,650円(税込)
256ページ
ISBN: 978-4022520845
「老後が不安」と投資に走る大学生。
「ママよりも年収の高いパパが偉い」と信じる小学生。
膨らむ“お金の不安”の裏でこれから何が起きるか、あなたは気づいていますか?
・労働と投資、どちらが報われる?
・お金以外に頼れるものは?
・どうすれば仕事を減らせる?
などの8つの問いから、不安を希望に変える生存戦略を描く。
【本書のキーワード】
10万人の「もう疲れた」が教えてくれた、本当に知りたいお金の話
・焦りを生む空気から、どう抜け出すのか?
・稼いでいる人を真似ても、なぜうまくいかないのか?
・労働と投資、本当に報われるのはどちらか?
・お金以外に頼れるものは何か?
・「お金を稼ぐ人が偉い」と思われるのはなぜか?
・いつまでお金に支配されなければならないのか?
・どうすれば仕事を減らせるのか?
・“大人”の常識は、これからも通用するのか?
【目次】
はじめに── どうして、お金の不安が増えるのか?
第一部 整理する――「外」に侵されない「内」の軸
第1話 その不安は誰かのビジネス
第2話 投資とギャンブルの境界線
第二部 支度する――「内」に蓄える資産
第3話 「会社に守られる」という幻想
第4話 愛と仲間とお金の勢力図
第三部 直視する―― 変えられない「外」の現実
第5話 「あなたのせい」にされた人口問題
第6話 「お金さえあれば」の終焉
第四部 協力する――「内」から「外」を動かす可能性
第7話 「仕事を奪う」が投資の出発点
第8話 「子どもの絶望」に見えた希望