船体以上にやっかいな原子炉と核燃料

そもそも米韓首脳会談では、両国は相互関税を25%から15%に引き下げ、かわりに韓国は米国に総額3500億ドル(約53兆円)を投資し、うち現金投資が2000億ドル、造船分野の投資が1500億ドル(約23兆円)になるということが確認された。

米国は中国の造船能力に大きく水を開けられており、昨年6月韓国企業ハンファ傘下の会社が買収したフィラデルフィアのフィリー造船所に韓国政府が追加投資すると思われていた。

韓国の「原潜は国内建造」発言にトランプ大統領はなにを思う?
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ただし、米国で現在、原潜を建造しているのは、バージニア州のニューポートニューズとコネチカット州のジェネラル・ダイナミクス・エレクトリック・ボートの2箇所の造船所。専門家の間ではフィリー造船所ではそのノウハウをどのように取得するかが焦点だった。

軍事技術に詳しいアナリスト毒島刀也氏がこう語る。

「フィリー造船所は230〜250m程度の中型タンカー、貨物船を造る力のある造船所なので、原潜のサイズ的には全く問題はありません。

ですが、セキュリティチェックや途中検査(監査)を必要とする軍艦そのものは造っていませんし、原子力設備を含む特殊艤装品を受け入れる体制は整っていません。

潜水艦の建造経験もないので、潜水艦を造る際に避けられない高張力鋼(HY80相当)の溶接のノウハウを持つ溶接工もこれから養成する必要があります(韓国では相当する溶接技術を持つと見られるが手法がまるきり別物らしく、アメリカの造船所に適用できるかは微妙)」

 さらにその船体に乗せる原子炉や核燃料がさらにやっかいだ。毒島氏が続ける。

「船体技術は既にありますが前述の通り系統も違う。韓国側は原子炉以外興味ないでしょう。もともと米韓原子力協定で20%未満の低濃縮ウランは韓国国内で製造できても、軍事目的に使うことはできませんから…。

ベンチマーク(指標)と称してアメリカの退職した熟練工員、技術者を韓国に招聘するという手もありますが、韓国の過去の数々のやらかしで、米国の原子力技術者は韓国との接触は厳重な監視下にあって、今年1月に米エネルギー省への出入りできない「センシティブ国」指定されています。

韓国が開発したと主張するBANDI-60小型原子炉は現行ロシア潜水艦に使われているOK-650とほぼ同一と見られており、これも20~45%の高濃縮ウランを必要とします。そこで船体と原子炉は自国でつくるから、それに合う核燃料を米国が供給して欲しいというわけです。

拒否された場合、韓国側は米韓原子力協定を破棄してもいいですが、そもそもウランはどこから入手するのでしょうか? フランス、ロシア、中国、イランから? 北朝鮮なら自前のウラン鉱山ありますが…」