「長嶋さん亡きあと野球界、とりわけ巨人の行く末は厳しいものになる」エモヤンが悲観する日本野球の迷走っぷり
今年6月、国民的ヒーロー・長嶋茂雄さんが亡くなった。長年日本プロ野球界を象徴する存在であった“ミスター”の訃報には、プロ野球ファンならずとも万感胸に迫る思いであった。そして、その喪失とともに深刻さを増すのが、日本野球界の迷走ぶりである。巨人の低迷、イベント偏重の球場運営、MLB追随の戦術——長嶋“後”の球界は、今まさに岐路に立たされている。
新刊『長嶋亡きあとの巨人軍』より一部抜粋・再構成してお届けする。
長嶋亡きあとの巨人軍#1
巨人の野球はつまらなくなったのか?
ところで、2025年シーズン中には、「巨人の野球はつまらなくなった」という言葉をよく耳にした。絶対的なエースもいなければ、胸を躍らせてくれる強打者もいない。走攻守のすべてにおいて平均点前後の野球を見せるだけで終わった。
2024年オフには、中日のライデル・マルティネスを12億2000万円という破格の年俸で獲得した。これによって8回を大勢、9回をマルティネスに託すことになり、多くの巨人ファンが「これで後ろが盤石になる」と安堵した。
だが、ことはうまく運ばない。大黒柱だった菅野智之の退団後、頼みの戸郷翔征やフォスター・グリフィンが不振や故障で次々に離脱。すると、1年前にリーグ優勝した同じチームとは思えないほど、先発陣が脆弱なものとなった。
東京ドームへ向かう巨人ファン
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結局、シーズンを通じて優勝争いに加わることなく、126試合を消化した時点で阪神に早々と優勝を決められてしまう。情けない戦いに終始した1年となった。
ほかのチームのファンと違って、冷静に試合の流れを読めるのが、巨人ファンの特徴だ。「ここで勝負が決まる」という場面で、得点できなかったら、サッと席を立って帰路につく。
7回裏が終了して、2点差以上ついて巨人が負けているとき、一塁側の観客が次々と通路を登っていく様子を、私は東京ドームの解説者席から数えきれないほど見た。
長嶋さん亡きあと、野球界、とりわけ巨人の行く末は厳しいものになるんじゃないのか。
2025年はそう悲観的にならざるを得ない1年だったように思える。
文/江本孟紀 写真/shutterstock
2025年11月1日
1,045円(税込)
200ページ
ISBN: 978-4594101572
長嶋さん亡きあと、野球界、とりわけ巨人の行く末は厳しいものになるんじゃないのか。
2025年はそう悲観的にならざるを得ない1年だったように思える。
そこで本書では、長嶋さん亡きあとの巨人について、野球界の動向と重ね合わせながらお伝えしていければと思い、筆をとった。
主力打者が不振にあえぐ際には長嶋さんの力を借りて打撃指導を行ったり、チーム状況が思わしくないときにも長嶋さんを呼んで檄を飛ばしてもらったりもしたが、当然ながらこれからは一切できない。
巨人が抱えている課題は何なのか。さらには球界全体ではびこる諸問題にも、躊躇せず切り込んでいきたい。
長年野球界を見続けてきた解説者の視点で、日本野球をどう改善していけばいいのか、あますことなく述べるつもりだ。
巨人にとって、あるいは球界全体にとって、少しでも参考になれば、この上ない幸せである。
江本孟紀 (本書「はじめに」より)
【本書の内容】
第1章 東京ドームに「閑古鳥が鳴く日」がやってくる!?
第2章 1990年代の巨人に大物選手が次々とFAでやってきた、本当の理由
第3章 巨人の魅力がなくなった理由。私はこう考える
第4章 甲斐拓也は巨人にとって必要だったのか
第5章 阿部慎之助は名将となり得るのか
第6章 長嶋さん亡きあと、球界を盛り上げるだろう、3人の元メジャーリーガーたち
第7章 長嶋さん亡きあとの、巨人と野球界のこれから