独身偽装はマッチングアプリが流行り始めた時期と重なるように増えてきた

「法律事務所Z」の溝口矢弁護士(東京弁護士会)によると、独身を名乗る既婚男性に騙される女性からの相談は年々増加傾向にあるという。

「マッチングアプリが流行り始めた時期と重なるように増えてきた印象です。それも、単に女性に独身を偽って接触するだけではなく、女性に婚約指輪をプレゼントしたり、両親に挨拶をしたり、不妊治療にまで付き合う事例も少なくありません。

おそらく、そこに至るまでに『実は妻がいて……』と言い出せない、中途半端で無責任な男たちが招いた結果だと捉えています」

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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こうしたトラブルに巻き込まれた場合、争点のひとつになるのは男性の妻から、不貞関係による慰謝料請求をされるかどうかだという。

「女性側が、相手が既婚者であることを本当に知らなかったのか、あるいは男性側の家に入れない、連絡のとれない時間帯があるといった怪しげな行動を察していたのに真実を問い詰めようとしなかったのか、などが問題となります。

要は、女性側の身の潔白。相談に来ていただいた女性には、LINEで『独身だ』と言わせるなど、騙していたとわかる強い証拠が握れれば、十分に戦えます。ただ、弁護士に相談する前に、男性の妻から詰められて謝罪や慰謝料を払ってしまうと、不貞を認めてしまうことになるため注意が必要です」

写真はイメージです(PhotoACより)
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未婚だと偽った男性への法的処置はどうなるのか。

「関係性の深さにもよります。たとえば結婚を前提とした真剣交際だと思わされていた場合、婚約破棄の事例と同等の扱いになるため、損害賠償を請求することができる。その相場は大きいもので数百万円程度です。

また、示談で終わるケースも多いものの、いっぽうで証拠が出そろっているのに男性側の往生際が悪く示談ではまとまらないというケースも一定数あります。『あなたのしていることは偽装ですよ』と指摘しても、『そんな犯罪者呼ばわりするな! 俺だって苦しかった』と謎の訴えをする方が多いですね」

独身と偽る男性の意図はわかりかねるが、被害女性が少しでも減ることを願ってやまない。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班 サムネイル/PhotoAC