「マンション価格がゼロになっても満足」

――ではお金の部分はどうでしょうか。昨今のインフレで将来の修繕のために積み立てているお金が不足するのではという声もあります。タワマンの修繕には普通のマンションよりお金がかかりますので、将来が不安ではないですか?

その時にはインフレによって給料も増えているはずなので、問題ないのではないかと思います。また、貯めている積立金は運用をすればいいのです。現金で持っていると価値が目減りしてしまいますが、運用することでそれはカバーできます。ですので、優秀な管理組合を持っているマンションがこれからは強いと思います。そして、追加で修繕のお金が払えないという方は、売却すれば良いんです。タワマンは流動性が高い(売却しやすい)のも魅力のひとつですから。

――でも、「今はタワマンバブルで、いまに暴落する」という声もかなりあります。怖くないですか?

リーマンショックの時も、実はそこまで大きくは下がってはいないんです。「半分になる」といった暴落論は大げさではないかと思います。私はいま、暴落は来ないのではと考えていますが、もちろんその可能性がないとは言えません。

ただ、私はもともと建築物が好きで、素晴らしい建築の中に住むこと自体が特別な経験だと考えています。だから、もしこのマンションの価値がゼロになっても、この家に住めたという経験に満足できる、と思って買っています。

西岡さんがかつて住んでいたパークコート浜離宮 ザ タワー
西岡さんがかつて住んでいたパークコート浜離宮 ザ タワー

――なぜ、暴落を願う声がこんなに強いと思われますか?

実は気持ちはすごく分かります。私も一度だけ飲み会でお会いした人が、暗号資産ですごく儲かったと自慢してきたのです。その時に内心「うらやましい」と思いましたし、心のどこかで下がることを願う気持ちがありました……。今はタワマンの値上がりばかりが注目されて、分断が強まってしまっているのかなと。ですので、マンションの「含み益」を自慢するのはあまり良くないのではないかと思っています。

――タワマンの売買自体にはリスクはありませんか。かなり高額な取引になるかと思いますが。

実は3部屋目の豊洲のマンションを売る時に、ひどい目にあったんです。お客様が20人も部屋の内見に来たのに、全く売れない。そんなに高い売価をつけているわけではないのに、おかしいなと思っていました。次のマンションの引き渡しが迫っていたので、かなり焦りました。そこで別の不動産仲介業者に代えたところ、すぐ売れたんです。

――それは不思議ですね。

最初の仲介業者は割安な価格での「自社買い取り」を狙っていたのではないかと思います。担当者は、「うちならもし万一売れなくてもこの部屋を買取します。そちらの方が西岡さんも安心じゃないですか?」と言っていたんです。あえて人に売らないことで、自社で割安な価格で買い取りができて、大きな利益が出ますから。

――なるほど……それならなぜ20件も内見を入れたのでしょうか?

私は担当者に鍵だけ預けて、内見には立ち会わなかったんですよね。ですので、本当にその検討者たちは実在していたのか……。検討者がゼロなら、「専属専任媒介契約」という専属契約を私に解除される可能性があったので、それはまずい。だから仲介業者は検討者を「偽装」したのではないかと。

タワマン売却のトラブルを語る西岡さん
タワマン売却のトラブルを語る西岡さん

――そんなことが……恐ろしいです。

あくまで推測ではありますが、別の不動産業者と話してもその可能性は高そうだと言われました。売れたときには本当にホッとしましたよ。不動産業者の方には、こういったことをせず、お客さんに寄り添ってほしいなと思います。でも、それ以降の売買では特に大きな問題は起こっていません。タワマン固有の問題でもないのかなと思います。