小泉政権に国民の言論に規制を課す資格は既に失われている 

ここで改めて言及するが、自民党総裁選は単純に同党のトップを選ぶというだけの選挙ではない。中国の習近平やロシアのプーチンと対峙するだけの資格がある民主主義国のリーダーを選ぶものだ。

民主主義の観点から傷がついた人間が担うべきではない。まして、昨年の総裁選挙時、小泉氏は北朝鮮の金正恩氏を念頭に「首相になればトップ同士、同世代なわけだから、今までのアプローチにとらわれず、前提条件なく向き合う、新たな機会を模索したい」と述べていたが、小泉氏が行うべきことはそんな友達感覚の話ではないはずだ。

さらに、言論の自由という観点からは、今回の総裁選後、自民党の中にはSNS規制を推進する意向を示している国会議員がいるが、ステマ騒動の小泉政権に国民の言論に規制を課す資格は既に失われている。

最後に、日本は、政界、官界、財界、その他の領域において、戦後80年の間に作られてきた門閥支配が幅を利かせている。

特に実績もない世襲議員が総理総裁に立候補して、まさに権力を手にしようとしてる姿を見れば、国会議員一人が自らの正論を通そうとしても無力感に絶望もするだろう。かつては国民と同じ立場にあった叩き上げの国会議員であれば、エスタブリッシュメントの世界は遠い世界のように感じるかもしれない。

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氷河期世代は、怒りを通り越して…

しかし、国民の諦観はそれ以上のものだ。世襲議員が地盤を引き継ぎ、総理が事実上世襲される世の中に何の希望があるのだろうか。氷河期世代の人々は、怒りを通り越して乾いた笑みを浮かべるのではないか。

それよりも若い人々にとっては、成功するには血筋が全て、という価値観が当たり前になってしまうことすら懸念される。

政治は日本国民のために行うべきものだ。そして、自民党の議員を国会に送り出した票は、名も無き市井の人々の思いを投じたものだ。したがって、自民党国会議員の一票はあなたのためのものではなく、日本国民にとって正しい選択をするためのものだ。そして、あなたが投じた一票は日本の歴史に残ることになる。

自民党議員が今回投じる票は、激動の時代の中で、本当に重要な総裁選挙での一票だ。だからこそ自らの良心に従った投票を行うことをお願いしたい。

文/渡瀬裕哉