そもそも誰が秘書たちを仕切っているのかもわからない
本来、総裁選挙とは私たちが見せられる表の討論会などよりも、党員一人一人への電話かけなど地道な作業が大事になってくる。そうした作業は議員よりも秘書たち実動部隊の仕事だ。
ある秘書は「普通の選挙では秘書たちは土日もシフト表が組まれて交代で電話かけをさせられる。小泉陣営は土日のシフト表も作られていないし、そもそも誰が秘書たちを仕切っているのかもわからない」と嘆く。
福田赳夫氏と大平正芳氏が争った1978年の総裁選は、現職の総理総裁が負けた唯一の総裁選だ。当時は田中角栄氏が大平氏の支援に回った。そのときに史上最強と称されたのが「田中秘書軍団」の地をはうような選挙戦だ。
その結果、地方の党員による予備選挙で大平氏が大逆転した。総裁選の勝敗のカギを握るのは議員たちよりも実動部隊となる「秘書軍団」というのが総裁選の歴史だ。現職の総理総裁ながら予備選に負けた福田氏は「天の声にもたまには変な声がある」と言い残して、本選を辞退している。
『自民党を一つにする』といってぶっ壊す小泉ジュニア
それでも、報道各社の調査を並べてみても、議員票で1位通過が確実視されている小泉氏の優勢は揺らいでいない。2位高市氏、3位林芳正氏と並んで、現状では決選投票で小泉氏が高市氏を下すとみられている。
しかし、「ステマ」疑惑を抱えた小泉氏が総理総裁になって本当に自民党は一つにまとまって再生なんてできるのだろうか。
そんな筆者の問いに、ある陣営の閣僚経験者はため息まじりにこう言って嘆いた。
「小泉パパは『自民党をぶっ壊す』といって延命させた。小泉ジュニアは『自民党を一つにする』といってぶっ壊すんじゃないか」
文/長島重治