ドン底に落ちていた自民党の党勢の回復に努めた人を参考に
「俺が俺がとか、自分が自分がというそういった総裁ではなく、自分の思いを抑えてでも党内の一致結束に汗をかく」
9月20日の立候補会見で、ネイビーブルーのネクタイ姿でこう語ったのは、小泉進次郎農相(44)。昨年の総裁選では、〈決着 新時代の扉をあける〉と書かれた青い看板をバックにしていたが、この日は凝った演出もなく、シンプルで地味な会見だった。
小泉氏は「自民党に足りなかったのは国民の声を聞く力」と語り、自民党が野党だった2009年から2012年にかけて総裁を務めた谷垣禎一氏に言及。そして、自民党が谷垣総裁のもとで2010年から取り組んだ「なまごえプロジェクト」を再始動させると語った。
小泉氏は会見前日に谷垣氏の自宅を訪れ、助言を受けていた。
なまごえプロジェクトは、総裁の全国行脚や、国会議員が少人数で有権者と車座になって議論する「ふるさと対話集会」を通じて、国民の生の声を取り入れて政策に生かす取り組みだ。
「谷垣さんは“総理になれなかった総裁”でしたが、ドン底に落ちていた自民党の党勢の回復に努めた人です。なまごえプロジェクトでは、党幹部が20~30人の集まりを何カ所も周り、それを何百回と繰り返した。非常に有効だったし、自民党が一丸となって取りくんだことで、団結力が生まれた。
安倍晋三元総理がいた頃は、何も言わなくても自民党が一つにまとまれたけど、いまは一体感が失われている。解党的出直しが求められている今だからこそ、谷垣さんの取り組みを参考にして、もう一度、国民の声を聞きながら、自民党の再生を図りたいというのが、小泉さんや我々の考えなのです」(小泉選対関係者)
小泉氏は、会見翌日から、さっそく「なまごえプロジェクト」をスタートさせている。
9月21日に、千葉県船橋市とさいたま市を訪問し、漁業関係者や党の支援者らとの車座対話を実施した。
党内の一致結束をテーマとする小泉氏は、政策面でも独自色を出さず、無難で地味なものにまとめた。持論である選択的夫婦別姓制度や、解雇規制の緩和なども“封印”している。
経済政策では「30年度までに平均賃金100万円増」を掲げているが、これもさきの参院選の自民党公約にならったものだった。