「“普通の総理”になろうと無理をしたのではないか」
激務をこなしながら、政権運営にあたっていた石破総理。だが、誰もが“らしからぬ振る舞い”と感じたのが、3月に発覚した「商品券問題」だった。
石破総理は3月3日に首相公邸で、新人議員15名と食事会を開催。この食事会に先立ち、一人につき10万円相当の商品券を配っていたのだ。自民党派閥の裏金事件の余波も残る中、10万円相当の“お土産”は社会通念上の範囲を超えている。批判が高まり、支持率低下も招いた。
石破総理を巡っては、「めったにおごらないし、お中元も返さない。よく言えばクリーンで、悪く言えばケチ」(自民党閣僚経験者)という評判だっただけに、この商品券問題は永田町で驚きを持って受け止められた。
自民党の中には「少しでも党内基盤を固めようと、石破らしさを消して、“普通の総理”になろうと無理をしたのではないか」と指摘する声も出ていた。
もう一つのターニングポイントは「消費税問題」を巡る対応だろう。筆者が4月上旬に石破総理とコミュニケーションを重ねる政権幹部に取材すると、「総理の本意としては、消費減税をやりたがっている」と語っていた。
この政権幹部は「ここを突破しない限り、この政権は持たない。総理は消費減税を必ずやりきると確信している」と語気を強め、石破総理が消費減税に傾いていることを言明していた。
自民党内にも参院選の目玉政策として、消費減税を求める声は多かった。ただ、結局ここでも“石破カラー”が発揮されることはなかった。
石破総理はその後「日本の財政はギリシアより悪い」などと国会で語り、減税に消極的な立場になっていく。参院選では野党が消費減税を掲げるいっぽうで、自民党は目玉となる経済政策を打ち出せず、参院選でも与党の過半数割れとなる大惨敗に終わった。
石破氏に近い自民党の重要閣僚経験者はこう語る。
「リーダーシップを発揮しきれず、何がやりたいのか伝わりにくい政権になってしまった。石破さんは勝負師ではなかったんだよ……」
国民から大胆な取り組みを期待された石破総理。だが、その独自性は充分に発揮されることのないまま、官邸を去ることとなった。
「ポスト石破」の座を争う総裁選は9月22日の告示10月4日投開票のスケージュルを念頭に検討されているという。小泉進次郎農水相や高市早苗元経済安保相、林芳正官房長官らを軸とした戦いになると予想されてている。
取材・文/河野嘉誠 集英社オンライン編集部ニュース班