炎症を繰り返すことで肌の「老化」につながる 

――眉毛の脱色のリスクについてはいかがでしょうか。 

数十年前から体毛の脱色をオキシドール(主成分は過酸化水素)などで行なっていましたが、その当時からかぶれる人はいました。毛のメラニン(色素成分)を何らかの化学作用で壊すような薬剤は当然皮膚に優しいわけはないので、一回であっても刺激性の皮膚炎を起こすリスクはあります。

あとは染毛でも脱色でも一緒ですが、毛が伸びて生え変わるごとに繰り返していくことになります。そうすると、何回目なのかは人によりますが、皮膚が感作(ある抗原に対して抗体を作ること)されて本物のかぶれ、つまり抗原抗体反応が成立してしまうことによる「接触性皮膚炎」のかぶれになる可能性もあります。

ですから皮膚科医としては、眉の色を薄めたいのであれば、脱色よりは眉マスカラのほうが優しいかなと思います。

写真はイメージです(PhotoACより)
写真はイメージです(PhotoACより)

ついでに言えば、まつげのエクステンションよりはマスカラのほうがましです。エクステンションはグルー(のり)でかぶれたり、眼瞼下垂が進行しやすくなりますから。また、洗いにくいのでニキビダニが増えやすくなったりしますし。

「ハレとケ」という言葉がありますが、イベントや撮影がある特別な日には、いろいろなさってもいいと思います。でも日常的なメイクは出来る限り刺激は避けるべきです。なぜなら、繰り返すことでの刺激による炎症が起こり、炎症を繰り返すことで肌が老化するからです。

「微小炎症」といって、目に見えて湿疹を起こしていないレベルの炎症でも老化を進行させることがわかっています。ですから肌に刺激を起こして一つも得はありません。

――最近は小学生でもメイクする子が増えているようです。

皮膚のバリア機能は、15歳くらいでようやく整ってきます。子どもの肌は大人と同じではないのです。また、第二次性徴が始まる11歳から20歳ぐらいまではニキビが花盛りになるので、常に炎症を起こし、バリアが傷ついた状態です。

写真はイメージです(PhotoACより)
写真はイメージです(PhotoACより)

バリア機能が弱いところにメイク用品を塗り続けると、含まれる成分や金属などが、角質を超えて表皮に浸透し、抗原抗体反応を起こすチャンスが増えてしまいます。また、若いうちは安全性などの信頼度が低い安価な商品を選びがちであることも心配な点です。たとえ大手メーカーの品であったとしても、子どもが使用する前提では作られていません。

そしてある特定の成分Aが使えなくなると、その成分Aを含む化粧品はそこから一生使えなくなってしまうんですね。そのリスクについてほとんど知られていません。文化的・教育的な意味合いではなく、医学的な観点から若年者のメイクは危険です、と言いたいです。

銀座ケイスキンクリニック・慶田朋子院長
銀座ケイスキンクリニック・慶田朋子院長