ゼロゼロ融資の1兆2000億円が不良債権
政府系金融機関による中小企業を対象とした実質無利子、無担保のゼロゼロ融資は2023年度末時点で20兆6397億円に上っている。本来であれば、借り入れた資金をコロナ後の経済を見据えた投資へと振り向け、会社を成長させようとするのが経営者の役目だ。
ところが貸付を行なった企業のうち、製造業などは売上高・経常利益ともに高水準で推移する一方、飲食業や宿泊業などのサービス業は伸び悩んでいる。ゼロゼロ融資は一部の企業を延命させるだけの結果になった。
政府系金融機関のゼロゼロ融資における債権の状況を会計検査院が調べたところ、1兆1965億円が「リスク管理債権」であることがわかった。いわゆる不良債権である。この不良債権は前年度比で3179億円増加していた。また、返済期間の延長、月々の返済額の減額など条件変更を行なった債権も前年度比で4000億円増加し、1兆654億円となった。
一般的に金融機関からの借入の利払いに対して、営業利益と受取利息・配当金の比率が1を下回る状態が3年続くとゾンビ企業と定義される。いつ倒産してもおかしくはないが、金融機関や政府からの支援で生きながらえている企業のことだ。
東京商工リサーチは20~30万社を対象にゾンビ企業の調査を行なっており、2022年は全体の15.4%がゾンビ企業だった。前年から3.4ポイントも上昇している。この上昇幅は2015年以降で最も高い。コロナ禍後の2023年は経済活動が再開したことで14.6%まで下がったものの、依然として高い水準を維持している。
しかも、日本銀行は金融緩和政策を転換し、利上げのタイミングを見計らっている。エコノミストの間では、今年10月の金融政策決定会合が次の利上げになるのではないかとも言われているが、日銀の利上げはゾンビ企業をさらに増やす恐れがある。
そしてゼロゼロ融資で実質ゼロ金利となる期限は3年間であり、2023年に借り入れを行なった中小企業もいよいよ基準金利が課されることになる。原材料と人件費、水道光熱費の高騰に加えて金利負担も重くのしかかってくるのだ。
収益性が改善できなかった会社が淘汰され、強い企業だけが生き残る大転換期が視野に入ってきた。