「銘柄米と備蓄米を買う層が二極化しているんです」
東海地方を担当する大手スーパーのエリアマネージャーも取材にこう証言した。
「備蓄米で潤っているのは都内だけ。確かに東海地方にも名前が知られた大きいスーパーはたくさんあるけど、地方の地場のスーパーではまだ欠品してるところもありますよ。値段も5キロ2,000台のように安い物じゃないし、その2倍するケースもある。
なぜそうなるかと言えば、備蓄米の保管場所が東日本に集中しているから。輸送コスト上、地方の小規模業者には供給が届きにくい流通構造がある。輸送費が高いと地場のスーパーではどのみち店頭価格が高くなるからと調達を諦めたところもある。
諦めずに調達し、安く売ろうと努めるスーパーもあるけど、すぐ売り切れる。スーパーに出回りにくくなるから、農家から直接大量に買って親族で分け合うというケースも少なくないですよ。
それでも東海地方はまだましな方で、九州まで行くと備蓄米を店頭で一度も見たことがないという人がザラにいますよ」
一方で米どころ新潟の流通業者がうらやむ首都・東京はコメ不足を脱したのか。文京区のスーパーの50代のオーナー女性は、こう安堵の声を漏らした。
「都内はもう米騒動終わったよ。春くらいまではコメは確かに少なくて、当時は大手スーパーがカリフォニア米を下ろしていたからね。でも備蓄米が出始めたから供給量が安定した。今じゃ都内で備蓄米を買う人は少ないと思いますよ。
よく話をする40代の主婦のお客さんが『昔のコメはまずいから』って、収穫から1年経っていないコメを買いに来るよ。備蓄米は5キロ2,000円前後だけど、ブランド米となると5キロ4000~5000円だからね。
コメの値段は2023年末から確かに一気に2倍に上がったけど、供給量が安定した今では、高い金払ってでも新しいコメを買う人が都内ではほとんど。他のスーパーからもそう聞く」
こうした「二極化」の側面を、大手流通チェーンを傘下に持つ商社の営業担当の30代男性はこう分析する。
「随意契約の備蓄米を約5000トン購入し、6月上旬から5キロ約2000円で販売し始めた。都内のスーパーには週3で備蓄米を卸しているので、市場全体の品薄感は少し薄れてきましたね。
ただ、コシヒカリなどの銘柄米は5キロ税込みで約4500円と相変わらず安くない。もう7月後半で、新米が出るまでの銘柄米の残りも少なくなっているので、仕入れ価格が簡単には下がらないからです。
当初は備蓄米を扱うと銘柄米の売り上げが落ち込むのではないかという懸念もありましたが、銘柄米は今も根強い需要があるんです。セールで備蓄米との価格差を5キロあたり1000円くらいにすると、飛ぶように売れますよ。
銘柄米を好む人はある程度金銭的に余裕があったり、お子さんのいない家庭、もしくは子供がまだ小さいとか大きくなってもう独立したとか、そういう層ですね。
一方で食べ盛りの子どもがいる家庭はそういうわけにはいかない。コメを子どもがいっぱい食べるからと備蓄米を買っていくわけです。銘柄米と備蓄米を買う層が二極化しているんです」