デビュー年に年間チャート1位となるほどの大ヒットを記録
あみんは、岡村孝子と加藤晴子という現役女子大生によるデュオだった。1982年の「第23回ヤマハポピュラーソングコンテスト」(通称ポプコン)に出場するため、岡村が作った楽曲『待つわ』で応募して、地区大会を勝ち抜いて本線(全国大会)に進んだ。
事前にはさほど注目されていなかったあみんが、グランプリに選ばれたのは、『待つわ』という歌の新鮮さがストレートに受け入れられたからだ。10代の女性の気持ちが素直に打ち出された歌詞は、いい意味でアマチュアらしく自然体で、素朴な“歌心”に光るものがあった。
ポプコンの審査員は全員がアマチュアの音楽ファンだったので、伸びやかな歌声と清々しくて爽やかなハーモニー、コマーシャリズムに毒されていない姿勢が共感を呼んだのだ。
さらに、「わ」の音韻を散りばめた歌詞も、よくできていて効果的だった。
そうした流れから、ポプコンのグランプリ曲の常で、何の心の準備もないまま、二人はレコードを出してプロデビューすることになった。
そのとき、アレンジを担当したのが萩田光雄。ヤマハ作編曲教室の出身で、アレンジャーとして大活躍していた才人である。
『待つわ』が同世代の女性以外からも支持されたのは、明快なハーモニーを活かすために2拍4泊のアフタービートにアクセントを置いた、萩田の絶妙ともいえるアレンジの力が大きい。
シングル盤の『待つわ』はリズミカルで力強いイントロのフレーズ、素朴な歌を飾る流麗なストリングスなどによって、久保田早紀の『異邦人』(1979年)にも匹敵するポップなサウンドになった。
あみんのデビュー・シングル『待つわ』は、発売されるとすぐにヒットチャートを駆け上がって1位になった。そして影響力があった人気歌番組『ザ・ベストテン』でもランクインし、その年のオリコンでは年間チャート1位となるほどの大ヒットを記録した。
ところが予想をはるかに超える大ヒットになったことの影響で、平凡な女子大生だった二人を取りまく状況と生活環境が一変する。