〈EC化率10%弱の衝撃〉日本でECショッピングが浸透しない2つの理由…実店舗で買うことが絶対的に好まれる商品とは
コロナ禍を経て、ECサイトで買い物をするという購買習慣が日常になった人も多いだろう。しかし、実は日本のEC化率はそれほど高まっていないという現状がある。さらに、都心部と地方・郊外でも大きな格差があるという。
その現状について『小売ビジネス』より一部抜粋・再構成してお届けする。
小売ビジネス#2
首都圏と郊外のEC利用格差
そしてもう1点、客観的な数字とイメージが異なる理由は地域差です。冒頭のクイズで50%以上と思われた方は、首都圏や大都市圏にお住まいの方でしょう。また20%くらいをイメージされたとしたら、地方・郊外にお住まいの方かもしれません。
EC販売額は2023年度実績で14.6兆円あります。このエリア別シェアを、家計消費状況調査などで試算すると、このうち首都圏での取引額が40%超、続いて関西圏で30%程度、残りの30%ほどが九州や中四国などその他のエリアになりました。
つまり、ECはそもそも首都圏や大都市圏の生活にフィットしたもので、地方や郊外の生活では実店舗が利用される傾向にあります。
都心ではECが活用される機会が多いが…
では、なぜ都市と地方でそんなに大きな違いが出るのでしょうか?もっともシンプルかつ強力な答えは、買い物習慣の違いです。特に地方郊外の生活では、「生活動線であるロードサイドに店舗があって、自動車で買い物できるから」だと考えています。
共働きで買い物を担う女性や男性は、そもそも生活に必須な軽自動車という機動力を持っています。そしていつものパート勤めや通勤途上のロードサイドに出れば、そこにはドラッグストアやスーパー、そのほかの専門店が充実しています。
品揃えも充実して価格競争力もあります。ECで頼むと数日〜数週間待つ必要がありますが、即、ワンストップショッピングができる実店舗のほうが便利です。
文/中井彰人 中川朗
『小売ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)
中井彰人 中川朗
2025年4月25日
1,848円(税込)
216ページ
ISBN: 978-4295410874
グローバル化から離れ、ガラパゴス化した業態。
海外からも注目される独自進化した「小売」の今。
生活に密着している業界だからこそ、その進化から目を離せない。
「小売」というと、製造業がいて、問屋があって、というイメージだが、実態はもっと複雑で、従来型の「仕入れて売る」という業態もあれば、もっと総合的なかたちですべてのサプライチェーンを内製化している企業もある。「小売」という業態は日本独自のもので、海外では見かけないビジネスモデルといっていい。消費者サイドから見ると、「便利で安くてサービスがいい」ということになるが、経営視点で見ると、「非効率・過剰サービス・利益が薄い」ということになる。本書は「知っているようで、あまり理解されていない」小売ビジネスについて、その歴史を紐解き、小売のおもしろさや魅力を伝える一冊として最適な入門書になっている。
(目次)
近現代史から学ぶ日本市場のガラパゴスな世界
チェーンストアから学ぶ小売の栄枯盛衰の世界
食品ディスカウンターに学ぶ覇権争いの世界
変化対応力から学ぶ小売専門店の世界
ネットスーパーから学ぶECの世界
インバウンド需要から学ぶアウトバウンドビジネスの世界
メーカーと問屋から学ぶ物流システムの世界
データから学ぶ小売DXの世界
最新テクノロジーから学ぶ未来の小売世界