針を振り切ったような世界で唯一無二のスタイル
レッド・ツェッペリンというバンドが何よりすごいのが、ファーストアルバムはジミーの自費で創られたことだ。つまり自主制作アルバムだということ。ジミー曰く、自分の腕が確かならデモテープで売り込むのだと。
ジミーとピーターは音源をニューヨークのアトランティック・レコードへ持ち込む。つまりそれは「完成された作品で、手を加えることもシングル発売も不要」という要求も含め、レコード会社側に音源に対しての手出しをさせないやり方でもあった。
ファーストアルバムが完成した瞬間、現在に至る現象・成功の確信があったのかどうか、過去にジミーにインタビューした際に聞いたことがある。
「完成した時、すごくいいレコードだというのはわかったよ。それまで、こういうアルバムはなかったからね。何かしら今までにない大変な作品を創れたぞ、という実感はあった。ファーストは我々が創造した、大量のアイデアが詰まりに詰まったアルバムなんだ。リフがもともとあったところから全然違うところに行き着くことに成功したからね」(ジミー・ペイジ、以下同)
ところが、そのファーストアルバムは当時マスコミに酷評された。同時にツェッペリンに対する本国イギリスのアクションが面白い。映像にも捉えられているが、ライヴでの観客の温度は低く、まだまだツェッペリンを理解する聴衆の経験値が浅い印象を受けた。無理もない。こんな針を振り切ったようなスタイルのロックバンドは世界中のどこにもいなかったのだから。
しかしその後、イギリスでもアルバムはチャートの最高位6位に達するヒットを記録。ファーストは現在までに世界中で800万枚以上を売り上げた。本作でも聴けるライヴテイク『幻惑されて』を奏でる1959年製フェンダーテレキャスターの音たるや圧倒的で完璧だ。2008年、ジミーにその唯一無二のリフの発想の根源とは一体何なのか聞いた。
「得てして他のフレーズを弾いているうちに、アイディアはパッと出てくるものなんだ。反対に意図的にはなかなか生み出せない。こういう風にやるとフレーズが出てくるというものでもない。そんな方法があったら売ってるよ(笑)
ありがたいことにおかげさまで、そういうアイデアが今でも出てくるんだ。多分、クリエイティブな発想というのはまだまだ残っているはずだからね」
ロック・ミュージックのギター・リフというのは、すべてがレッド・ツェッペリン(ジミー・ペイジ)から派生したものだと言い切っていい。インタビューした2008年当時、すでに40年以上ロックシーンの頂点にいた。頂点からの景色はどんなものか、ジミーは語る。