高校生の時に衝撃を受けたミステリ
── 今回もミルハウザーの『夜の姉妹団』など先行作品が多数登場します。
本を特別なものとして書きたくなかったんですよね。ブッキッシュな教養をひけらかすのでもなく、本を神聖視するのでもなく、身の回りにあるものとして気軽に扱う感じを出したかった。その軽みみたいなものは、図書委員という設定と合っていました。
── 米澤さんご自身は高校時代、どんな本を読まれていたのですか。やはりミステリですか。
高校生の時に衝撃を受けたミステリといえば、それはもう、綾辻行人さんの『時計館の殺人』ですね。
── 高校時代、図書室も利用していましたか。
利用していましたけれど、そんなに熱心ではなかったと思います。でもたしか、『ホット・ゾーン』や『東方見聞録』をリクエストして入れてもらったのを憶えています。それと、『ゲーム・オーバー』という、任天堂がアメリカでどのように受容されていったのかを追ったノンフィクションが出ていて、それも入れてもらった気がします。
── 作中の、「図書館は偉大になれる可能性がある場所」という言葉が印象的でした。
あれは堀川の言ったことですけれど、自分でも、図書館は知見の蓄積みたいなものにダイレクトに触れることができる場所だと感じますね。昔は図書館や本にアクセスできるのは特権のある人たちだけだったんですよね。今、なにかを知りたいと思う時、誰もが図書館に行くことができるのは、偉大なことだと思います。
── 米澤さんの高校の図書室は、堀川たちの学校のように利用者は少なかったですか。
いえ、私の高校の図書室は担当の司書教諭が学校図書室を活性化することに長けた人で、人がいないということはなかったですね。堀川たちの学校の司書さんがなぜここまでやる気がないのか。それは次の話に関わってくるんじゃないかという……。
── あ、第三弾では司書さんが出てきます?
そうですね……。まだどういうふうになるかは分からないんですけれど。
── 第三弾はどれくらい待てばいいのでしょう。他のシリーズのように首を長くして待つことになるのかどうか……。
各社さんと約束したお仕事を順番に書いているので、それが一巡してからになります。このシリーズに関しては、三部作にするのが一番きれいかなと考えているところです。