高校生の時に衝撃を受けたミステリ

── 今回もミルハウザーの『夜の姉妹団』など先行作品が多数登場します。

 本を特別なものとして書きたくなかったんですよね。ブッキッシュな教養をひけらかすのでもなく、本を神聖視するのでもなく、身の回りにあるものとして気軽に扱う感じを出したかった。その軽みみたいなものは、図書委員という設定と合っていました。

── 米澤さんご自身は高校時代、どんな本を読まれていたのですか。やはりミステリですか。

 高校生の時に衝撃を受けたミステリといえば、それはもう、綾辻行人さんの『時計館の殺人』ですね。

── 高校時代、図書室も利用していましたか。

 利用していましたけれど、そんなに熱心ではなかったと思います。でもたしか、『ホット・ゾーン』や『東方見聞録』をリクエストして入れてもらったのを憶えています。それと、『ゲーム・オーバー』という、任天堂がアメリカでどのように受容されていったのかを追ったノンフィクションが出ていて、それも入れてもらった気がします。

── 作中の、「図書館は偉大になれる可能性がある場所」という言葉が印象的でした。

 あれは堀川の言ったことですけれど、自分でも、図書館は知見の蓄積みたいなものにダイレクトに触れることができる場所だと感じますね。昔は図書館や本にアクセスできるのは特権のある人たちだけだったんですよね。今、なにかを知りたいと思う時、誰もが図書館に行くことができるのは、偉大なことだと思います。

── 米澤さんの高校の図書室は、堀川たちの学校のように利用者は少なかったですか。

 いえ、私の高校の図書室は担当の司書教諭が学校図書室を活性化することに長けた人で、人がいないということはなかったですね。堀川たちの学校の司書さんがなぜここまでやる気がないのか。それは次の話に関わってくるんじゃないかという……。

── あ、第三弾では司書さんが出てきます?

 そうですね……。まだどういうふうになるかは分からないんですけれど。

── 第三弾はどれくらい待てばいいのでしょう。他のシリーズのように首を長くして待つことになるのかどうか……。

 各社さんと約束したお仕事を順番に書いているので、それが一巡してからになります。このシリーズに関しては、三部作にするのが一番きれいかなと考えているところです。

栞と噓の季節
米澤 穂信
栞と噓の季節
2025年6月20日発売
990円(税込)
448ページ
ISBN: 978-4-08-744779-8

ベストセラー『本と鍵の季節』(図書委員シリーズ) 待望の続編!
直木賞受賞第一作

猛毒の栞をめぐる、幾重もの嘘。

高校で図書委員を務める堀川次郎と松倉詩門。
ある放課後、図書室の返却本の中に押し花の栞が挟まっているのに気づく。
小さくかわいらしいその花は――猛毒のトリカブトだった。
持ち主を捜す中で、ふたりは校舎裏でトリカブトが栽培されているのを発見する。
そして、ついに男性教師が中毒で救急搬送されてしまった。
誰が教師を殺そうとしたのか。次は誰が狙われるのか……。
「その栞は自分のものだ」と嘘をついて近づいてきた同学年の女子・瀬野とともに、ふたりは真相を追う。
直木賞受賞第一作は、著者の原点とも言える青春ミステリ長編!

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