目指すのは、ひきこもり就労ピアサポーター
40歳のとき、「起業しよう」と決めて開業届を出した。就労移行支援のプログラムで、仕事をしていて何にストレスを感じるか考えた際、「わからないのに聞けない」「自分で判断できない」ことがストレスだとわかり、「じゃあ、自分でやればいい!」と思ったからだ。
考えている事業は3つある。1つは物販事業だ。物販用のハンドメイド商品を作るためクラウドファンディングで資金を募ると100万円以上集まった。
物販事業で基盤を作り、ギフトショップを併設したカフェを作ることが2つ目だ。調子のいいときはカフェで接客を担当、調子が悪いときは物販用の商品を作ったり、ネットショップの管理をしてもらうなど、体調に合わせて仕事を選択できるような環境作りを目指している。
「ひきこもり自体は病気でも障害でもないので、ちょっとした工夫で働き続けられる方法はないかなと」
当初は、子ども食堂をやりたいと考えていた。実現に向けて学童保育で働いたり、社会人スクールで学んだりしたが、途中で「過去の経験を生かす方がしっくりくる」と感じて、方向転換したのだ。
生活費を稼ぐため、週3~4回アルバイト。物販事業の準備を進めつつ、WRAP(元気回復行動プラン)というワークショップも開催している。精神的な困難を抱える人が自分で回復を促すためのセルフヘルプツールで、千葉市のひきこもりサポート事業の認定を受けて補助金を得て、昨年は26回開催した。
「ひきこもりだけでなく、生きづらさを感じている方なら誰でも参加できます。補助金は会場費でほぼ消えるので、採算はまったく取れていませんが(笑)、これが3つ目のメンタルヘルスケア事業です。“自分の機嫌を自分で取る方法“を考えるテーマトーク会として、カフェを開業しても続けていく予定です。
人のためとか大それたことじゃなくて、自分の人生に無駄はなかったと証明したいというか、これを進めていくことが私自身のリカバリーにもなるので、自分のためにやっている感じですね」
だが、起業したいと思っても、そう簡単にできるものではない。「すごい行動力ですね」と感心すると、石丸さんは「『自分でやろう!』と決めたときは軽躁(軽い躁状態)の力を借りたかな」と屈託なく笑う。
病気の特性を理解し、強みに変えたわけだ。
〈前編はこちら『有料道路を自転車で爆走した過去…スポーツ少女だった女性はなぜ“3度のひきこもり”になったのか』〉
取材・文/萩原絹代