メディア報道の地獄

メディアの執拗(しつよう)な取材や実名報道によって、加害者家族が社会から厳しく非難されるケースは非常に多いです。逮捕直後は一時的で断片的な情報しか報道されないため、ときに事実とは異なる情報によって、さらなる偏見にさらされることもあります。

2020年、有名ロックバンドの元メンバーが強制わいせつ未遂の容疑で逮捕された際、一部のメディアが彼と妻の住居の写真を掲載したこともありました。

取材する記者も仕事ですし、上司からの厳しい指示により加害者家族を追っているのかもしれません。しかし、メディアにもその影響力を考慮したガイドラインがあって然るべきでしょう。

「夫婦の性生活はあったのか」「セックスレスだったのでは…」性犯罪を犯した夫の裁判が妻のトラウマになるケースも…加害者家族を追い詰める偏見と排除_3
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また、新聞やテレビで取り上げられなくても、近年は加害者のSNSアカウントが即座に特定され、本人だけでなく家族の氏名や住所など個人情報がさらされるケースが散見されます。勝手に抜粋した画像や情報をもとに、本人や家族に関する「まとめサイト」がすぐに立ち上がり、フェイクニュースを含む情報がまたたく間に世界に拡散されていきます。

閲覧数を上げることで収入を得ることを目的とした「トレンドブログ」では、真偽不明の情報が飛び交います。「たとえ情報が誤っていても、アクセス数を稼げて収益が得られればそれでいい」と言わんばかりの無責任な情報が加害者家族を追い詰めていくのです。

ネット上のデジタルタトゥーが要因となり、加害者家族の就職や結婚などが取り消される、職場を追われる、加害者当人が判決後・出所後に復職できないといったケースも多々あります。