くら寿司のスケールメリットを存分に生かした店舗

回転寿司チェーンの中では高価格帯だが、高級寿司店と比べればかなりリーズナブルな無添蔵。なぜこの値段で、品質のいい魚が提供できるのか。

「弊社では、網にかかった魚は種類や大きさ関係なく、全て一定の価格で買い取る『一船買い』を国内三か所で行い、漁師さんとのパイプも120か所以上持っています。新幹線を使った物流もそうですが、大手ならではのスケールメリットを生かし、クオリティの高いネタを抑えた価格で出すことができています」

くら寿司の仕入れでは、魚は種類や大きさ関係なく、全て一定の価格で買い取る『一船買い』(写真/くら寿司提供)
くら寿司の仕入れでは、魚は種類や大きさ関係なく、全て一定の価格で買い取る『一船買い』(写真/くら寿司提供)

通常のくら寿司では、この仕入れ力を生かしきれていなかった部分もあるそうで…

「くら寿司は540店舗以上あるので、貴重な魚はキャンペーンなどの数量限定でしか提供できません。でも無添蔵は店舗数が少ないので、貴重なネタでもレギュラーメニュー化できる。無添蔵では、くら寿司が持つ仕入れのポテンシャルを最大限楽しんでもらえると思います」

いっぽうで、くら寿司と同じようなネタもいくつかあるが、値段は無添蔵のほうが高い。これはなぜか。

「たとえば『えびアボカド』は、くら寿司の都心部での価格が150円なのに対し、無添蔵では280円で提供しています。このふたつの違いは、ネタの大きさにあります。メニューの写真を見比べてもらえればわかるのですが、無添蔵のエビは圧倒的に大きいですよね。

無添蔵で提供されている『えびアボカド』(筆者撮影)
無添蔵で提供されている『えびアボカド』(筆者撮影)
すべての画像を見る

ほかにも、寿司ひとつひとつにハケで出汁醤油を塗ったり、150円の大ばちまぐろ一貫にも丁寧に飾り包丁を入れるなど、無添蔵では、くら寿司では低価格高品質を実現するため、省くことを追求してきた“手間ひま”を、逆にかけています。その分を考えると、コスパ面ではくら寿司と無添蔵はほとんど変わらないのではないかと思います」

最後に、無添蔵の今後の展望について聞いた。

「中目黒店の評価を見つつではありますが、全国の都市部に100店舗は出店できると考えています。次にまた都内で出店するとしたら、食通が集う街、銀座あたりがいいかもしれませんね。物件次第なのでまだ何とも言えませんが、今後の展開を楽しみにしていただきたいと思います」

取材・文/渡辺ありさ