困難を抱える子どもが過ごしやすい環境を享受するには?

大阪市で支援級を受け持つ担任歴10年のO先生は、教育現場での問題点を以下のように話す。

「教育現場で特別支援教育が“後回し”になっている現状は、現場の私たちにとっては珍しいことではありません。人手不足の中、まずは学級担任を決め、次に専科、そしてようやく支援級という順番で配置されることもあります。

支援級の優先順位が低く、その役割が”空いている人がやるもの”“とりあえず回せばいいもの”といった軽視されたポジションになっている自治体、学校も少なくないのです」

そればかりか、こんな実態もあるという。

「支援級の教員が、全教科の普通級クラスの定期テストのふりがな打ちを担ったり、学年全体の雑務を引き受けたりしている学校も。本来、専門性が求められる支援級の教員が本務とは異なる業務に追われ、目の前の子どもたちへの支援が後手に回る状況なのです。

大切なのは、“支援教育は専門職である”という視点を学校全体が共有し、管理職(校長、副校長、教頭)がその理解のもとに人材配置を行うこと。

特別支援教育の専門資格保持者(特別支援教育士・学校心理士等)を、学校運営に関わるポジションへ登用し、学校文化そのものを再構築していく必要があるのではないかと感じています」(前出・O先生)

写真はイメージです(PhotoACより)
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不適切指導の諸悪の根源は、やはり教員不足か 

学級崩壊や、支援級での教員の不適切指導も「根底には教員不足があげられる」と前出・親野氏は話す。

「先生を増やして、少人数学級が成立すれば一人一人にきめ細やかな指導ができますし、いじめも発見しやすい。学力格差にも応じやすく、じっくり子どもに向き合うこともできます。

学級崩壊する前に補助の先生を多めに配置したり、不適切な指導があれば、現場から一時的に離れてもらうなど臨機応変な対応が可能になるのではないかと思います」(前出・親野氏)

写真はイメージです(PhotoACより)
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実際、少人数教育を取り入れている自治体もある。山梨県では少人数教育を推進し、これまでの35人教育を見直し、2021年度に小学1年生を対象に25人学級を導入。以降、25人学級を維持したまま進級し、来年には全学年で25人学級が実現する。

各都道府県の首長も本気で取り組めば、教育環境は変えられるのだ。ただ、本来は国が先頭を切ってやらなければならないことではないか。

「日本の教育予算は3.24%で、OECD(経済協力開発機構)加盟国で最下位です(対GDP比)。資源のない我が国こそ、子育て・教育にお金を投じるべきではないでしょうか。

教員の人員を増やし、必要とする学級へ十分に教員を配置するためにも、教育予算の増額は日本最優先課題だと考えます」(前出・親野氏)

日本は学校文化、教育予算を見直すべきときがきているのかもしれない。

取材・文/山田千穂 集英社オンライン編集部ニュース班