賞与の給与化のメリット・デメリットは?
一方で、デメリットとしては、心理的な高揚感の喪失が挙げられる。ボーナスとしてまとまった金額が支給されるときの喜びは、月給として分割されて振り込まれるよりも大きく感じる人が多いため、月給への移行で、その高揚感が失われる可能性があるのだ。
ただし、小池氏は「合理的に考えれば、賞与の給与化にはメリットの方が多い」と話す。では、こうした流れが今後の社会や働き方にどのような影響を及ぼすのだろうか。
「これまでは、変動費的な位置づけにある賞与を増やすことで、一時的な賃上げが可能でした。しかし“賞与の給与化”によって、固定費である月給に注目が集まると、企業は持続的な賃上げに踏み切らざるを得なくなるでしょう。
賞与は調整しやすい一方で、月給は一度引き上げると下げにくいため、企業側の負担も大きくなります」
また、ボーナス支給時期による「転職による損」が生じにくくなることで、従業員による転職のハードルはより低くなり、人材獲得競争はさらに激化するという。
「転職による不利益が減れば、より自由にキャリアを選べるようになります。結果的に、自身の市場価値を高めようという意識が高まり、中長期的な視点で働き方を考える人が増えるでしょう」
海外にもボーナスの制度はあるが、じつは日本ほど総支給額に占める比率が高い国は少ない。日本独自の“ボーナス文化”は、いま転換期を迎えているのかもしれない。
取材・文/集英社オンライン編集部