「トランプショック」で米国株バブルは崩壊間近か…高金利、高インフレ時代の到来で期待される日本経済復活のシナリオ
2025年の4月2日、アメリカのトランプ大統領が世界に向けて発表した関税政策は、世界中に衝撃を与え、世界同時株安を招いた。だが、この「トランプショック」は一過性のものではなく、世界経済や国際政治が大きく変化するパラダイム・シフトにほかならない。
エミン・ユルマズ氏の新著『高金利・高インフレ時代の到来! エブリシング・クラッシュと新秩序』より一部を抜粋、再編集しておとどけする。
エブリシング・クラッシュと新秩序#1
エブリシング・クラッシュ後の新秩序と日本
トランプの関税政策が彼の思いつきではなく、合衆国のスタンスの変化を意味するものならば、これは第二次世界大戦以降続いた世界秩序が大きく変わることを意味する。
歴史を見ると、大きなパラダイムシフトが起きてから新秩序ができ上がるまでには、政治や市場の混乱がしばらく続くことが多いのだ。しかし、変化は必ずしも悪いものではない。トランプ関税をスムート・ホーリー法に例える専門家もいる。
スムート・ホーリー法とは、1930年にハーバート・フーヴァー大統領がサインした関税法案だが、世界貿易を衰退させ、大恐慌を深刻化させた要因の一つとして悪名高い法案である。今回の関税措置が似たような結果をもたらすことを恐れる専門家もいる。
私は、このトランプ関税が世界大恐慌を引き起こすとは思ってはいないものの、行き過ぎた米国株バブルの崩壊と、ブロック経済化の加速をもたらすと予想している。しかし、これは米中新冷戦の開始当初から想定されていたシナリオであり、このシナリオに日本へのサプライチェーンの回帰と日本経済・日本株の復活はセットでついてくる。
すでにいくつものサインが出ているが、日本が再び世界経済のパワーハウスとなり、日本のソフトパワーがどんどん大きくなっていく時代がスタートしたと、私は確信している。
エブリシング・クラッシュ後の新秩序では日本が世界の中心国の一つとして大きな役割を果たすことになるであろうし、日本企業も内外から大いに注目されるだろう。
もちろんすべてがバラ色になると主張しているのではない。しかし、今後30年間、日本はビジネスにおいても相場においても、新たなチャンスがどんどん訪れる恵まれた環境になると思っている。
文/エミン・ユルマズ
エブリシング・クラッシュと新秩序
エミン・ユルマズ
2025年5月26日発売
1,870円(税込)
四六判/256ページ
ISBN: 978-4-08-786140-2
2025年の4月2日、アメリカのトランプ大統領が世界に向けて発表した関税政策は、世界中に衝撃を与え、世界同時株安を招いた。
NYダウやS&P、nasdaqなどの米国の株価の主要指数の暴落は一週間ほど続き、日経平均も一時は500兆円のもの時価総額を失うほどの暴落となった。いわゆる「トランプショック」である。
今回の経済危機は、まさにこの本の校了中のできごとであり、日々、情報をアップデートしながら、本が完成した。
ただ驚くことに著者は、すでにこの本において経済危機が来ることを予測し、4つの兆候について詳しく分析していたのだ。
それは2000年代のITバブル崩壊やリーマン・ショックの際にも表れた、いくつもの経済指標の変化を読み解いた結果だった。
また日々の経済データの分析のみならず、経済の歴史も深く研究している著者は、今回のトランプショックを単なる一時的なものとは捉えず、世界経済や国際政治が大きく変化するパラダイムシフトと考えており、その理由も本書では明らかに語られている。
中国のみならず、BRICS諸国も台頭する今、私たちは大きな歴史的か転換期に生きているのだ。
米国と中国の新冷戦、それによる経済のディカップリングを早くから予見していた著者は、常に著書やSNSで最新の情報を発表してきた。
本書は、それらを集大成し、世界が変わる重大な局面において発想の転換を促す書でもある。
ますますひどくなる新冷戦によって経済がブロック化し、世界中がより高インフレに悩まされ、インフレ下の不況、すなわちスタグフレーションに陥りかねないことに著者は警鐘を鳴らしている。
こんな先行きが見えない時代に、自分の資産を守るにはどうしたら良いか、歴史を学び長期的な視点を持つことの大切さを説く。
さらにこの新冷戦の中、再び注目を浴びるのが日本であることにも言及し、危機をチャンスと捉えるべきことを教えてくれる。
世界が日々、変化する現代に生きる私たちが、経済危機をいかに乗り越え、未来に希望をもつべきか? 多くのヒントを教えてくれる必読の書である。