特別でなければならないと思い込んでいないか?

「普通」とは、皆と同じことをするという意味ではありません。この人生をどう生きるかということについても、皆と同じである必要はなく、むしろ、同じであってはいけません。

ところが、多くの人は皆と同じような人生を生きようとしています。 

そのようになったのは、どんな人生を生きるかあまり深く考えたことがないからです。

ここには、親の影響も大きく関わっています。多くの親は、子どもが特別であってほしいと願い、幼い頃から勉強させます。親から高い理想を押しつけられた子どもは、親の期待に応えようと一生懸命勉強しますが、そのような努力をして生き始めた人生は特別な人生のように見えて、他の多くの人の人生とあまり変わりはありません。

「皆と違う=特別である」という意味ではない……親に言われて勉強を頑張り、競争社会を勝ち抜いてきた人ほど自分の人生を生きられなくなってしまう理由_3
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そのように、子どもは親に影響され、親が期待する人生を生きようと思うのですが、それでも、自分で決めたのです。親の言うままに生きることを選べば、自分の人生なのに、自分ではなく親の人生を生きることになります。

親の影響でなくても、他の多くの人を見て自分も同じように生きようと思った人も、自分の人生を生きられなくなります。自分の人生を生きない人などいないと思うかもしれませんが、自分の人生を生きたくない人はいます。端的にいえば、自分の人生なのに自分で責任を取りたくないのです。

そういう人は、親に言われた人生、皆と同じような人生を生きれば、うまくいかなくなったときに自分の責任だと思わずにすむと考えます。もちろん、そうなったとしても誰も責任を取ってくれませんが、自分自身の判断で何をし、どんな人生を生きるかを決める自信がないのです。

特別であろうとすることも、実のところ、自分で決めたわけではありません。親や周囲からの期待や影響によって、特別でなければならないと思い込んだのです。

写真/Shutterstock

「普通」につけるくすり
岸見 一郎
「普通」につけるくすり
2025/5/1
1,870円(税込)
336ページ
ISBN: 978-4763142214

「馬鹿につける薬はない」という言葉がありますが、
「普通につける薬」というのはあるのでしょうか?


本書は「自分は思っていたより普通かもしれない」「特別でないとしたら受け入れがたい」そんな不安を覚えた、ある青年から寄せられた悩みと向き合う中で生まれました。

「特別でなければいけない」という不安の根底には、常に他者との比較があります。
どうすれば、他者との比較から自由になり、自信を持ち、幸福に生きることができるのか。

本書では、「特別になろうとしないが、同じでもない」生き方を探ります。
人生から緊張を手放す思索を、はじめましょう。

【目次より】
第一章 なぜ特別でなければならないと思うようになったのか
第二章 特別でありたい人の脆い優越感
第三章 普通であることの意味
第四章 劣等感の克服
第五章 自信を持って仕事に取り組む
第六章 ありのままの自分から始める
第七章 自分の人生を生きる

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