カスハラは“なんでもハラスメント”の一種?「俺らの時代じゃ……」
先述の居酒屋の店主は条例の存在を知らなかったのだが、概要を説明したところ、「お客さん側に知れ渡らないと意味がないと思うんです」などと話した。
その言葉からは、条例があっても店の立場は依然弱く、客側の意識向上こそが最大のカスハラ対策だという嘆息が聞こえるようだった。
では、客側は今回の条例をどう受け止めているのか。今度は道行く人にたずねていった。
「私は先月までバンコクに赴任していたのですが、あっちの人は買ったモノが壊れても怒ったりしないんですよ。でも日本だとクレームつける人もいるので、店を守る仕組みについて賛成です。
日本って1度失敗したらやり直しできないと言われるけど、これって完璧主義だからだと思ってて。接客もまた、客が完璧に近いものを期待するから、カスハラが起こっちゃうのかなと」(50代男性・情報通信)
「今ってちょっとしたことでパワハラだのなんだの、俺らの時代じゃ当たり前だったことをなんでもハラスメント扱いするじゃない? 若手を萎縮させたら問題になるのに、若手が上の世代を萎縮させるのはいいのかって話だけど、カスハラもこれに似てると思うんだよ。
若手への正当な指導すらパワハラ呼ばわりされるように、真っ当な要望もカスハラ扱いされないか心配だよね。
夜のお店なんかも、どんなにスマートに接してても、女の子に『不潔なおじさんだからもう会いたくない』と思われたら出禁に指定されちゃう可能性もあるわけでしょ? 何がNGかはすべて店のさじ加減でカスハラ扱いされたら、それは横暴なんじゃないのって思う」(40代男性・自営業)
「気に入らない店員を動画でさらす人もいるので、条例ができたのはよかったし、罰則も作るべきだと思います。ただ、例えば不動産とか、契約時は謎のお金がかかって、入居中は管理会社が全然対応してくれないみたいな、酷い業界もあるじゃないですか? 正当なクレームまでカスハラ扱いさるんじゃないかって、そういう懸念はありますよね」(20代男性・営業職)
条例は施行から1ヶ月ほどのため、今後は改善点などが見つかり、改正の動きも出てくるだろう。現在はある意味で、社会実験の期間といえそうだ。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班