「塗りつぶしたらいいじゃん」

皆川 ヒロシさんはもうポケモンに関しては詳しいんですか。

藤原 全然詳しくない。でも「ポケモンGO」は結構やったので、そのあたりは。

皆川 素人のスタンスを貫き通しているところもさすがだなと思うんですが、ごく最近(講義は2023年の12月に実施)だとフェンディ※3とのコラボが発表されましたね。

鹿瀬島 そうですね。数日前に情報が初めて出ました。これはフェンディから誘われてやることが決まったんですけど、辰年、「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」なので、ドラゴンタイプのポケモンを使えないかというところから始まって。

皆川 すごい反響ですね、これも今。

鹿瀬島 すごいですね。まだ発売はしていないですけど。

皆川 さまざまなコラボ事例を一気に紹介してきましたが、逆に担当者だったら震え上がるような事件、「塗りつぶしたらいいじゃん」事件というのがあったと聞きました。

鹿瀬島 そうですね。いちばん最初のNYのハイプフェストのときにつくったアイテムなんですけど、袖のところのサンダーボルトのロゴの一部、〝FRAGMENT〞の文字が白く塗りつぶされているんです。これ、実は商標の問題でこうせざるを得なかったという裏事情がありました。

写真はイメージ 写真/Shutterstock
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皆川 でも商品はつくっちゃってたんですよね。

鹿瀬島 はい。ニューヨークでいきなり発表するということになったわけですが、リーガル的なチェックにすごく時間がかかるので、並行して商品制作を進めていたんです。で、ほとんどつくり終わった頃にリーガルの部署から「これは危ない」と言われて。「えっ、もうつくってるんだけど…」っていうシチュエーションになりました。

皆川 廃棄の危機だったということですか?

鹿瀬島 そうです。ヒロシさんには失礼すぎるんですけど、でもこのタイミングでちゃんと正直に伝えなきゃということでお伝えしたら、即答で「塗りつぶせばいいじゃん。ブートっぽくて面白いし」という言葉が返ってきたんですよ。

「あっ、そういうことがありなんだ」ということで、すでに物はできていたんですけど、〝FRAGMENT〞の部分だけもう一回上から全部塗ったんです。そういう途方もない工程を経て、やっと世の中に出すことができました。

藤原 確かに、〝FRAGMENT〞の社名が入らなかったら、これはもうコラボじゃなくなるので。

皆川 僕はこういうデザインだと思っていました(笑)。

※1 ハイプフェスト
ファッションオンラインマガジン『ハイプビースト』が主催するイベント

※2 ドーバー ストリート マーケット
「コム デ ギャルソン」が手がけるコンセプトストア。ロンドン、東京、ニューヨーク、パリなど世界8カ所に店舗を展開。

※3 「フェンディ × フラグメント ×ポケモン(FENDI × FRGMT × POKÉMON)」
2024年の1月に発売されたコレクション。

FRAGMENT UNIVERSITY 藤原ヒロシの特殊講義
非言語マーケティング
藤原 ヒロシ
FRAGMENT UNIVERSITY 藤原ヒロシの特殊講義 非言語マーケティング
2025年2月26日発売
2,200円(税込)
四六判/344ページ
ISBN: 978-4-08-790194-8

ナイキ、ポケモン、スターバックス……世界の大企業は、なぜ藤原ヒロシを求めるのか?

90年代に「裏原宿」という世界でも類を見ないカルチャーを築き、その後はファッションの枠を超えて支持され、原宿のゴッドファーザーとして世の中に多大な影響を与えてきた藤原ヒロシ。氏の存在によって“ストリート”という曖昧な言葉に意味が定義付けられ、“コラボレーション”や“別注”など、それまでになかった言葉が世の中に浸透した。しかし、氏の作り上げたヒットやムーブメントの数々は認知されていても、その裏側にある知性、アイデアの作り方や育て方、人脈や、コミュニケーションのスタイルについては語られていない。
本書は、藤原ヒロシの仕事には本人も意図しない“マーケティング”が介在しているのではないか、という仮説のもと、歩んできた歴史や数々の仕事の事例を抽出し、それらを学術的に言語化して講義を行った架空の大学プロジェクト「藤原ヒロシの特殊講義 非言語マーケティング」の内容をもとに、一冊の講義録としてまとめたものである。

DAY1 文化人類学 -遊学史-
DAY2 社会学 -メディア論-
DAY3 情報学 -交友研究-
DAY4 経営学 -コラボレーション理論-
DAY5 建築学 -空間デザイン論-
DAY6 ケーススタディ -スターバックス コーヒー ジャパン-
DAY7 ケーススタディ -ナイキ-
DAY8 最終講義

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