個人向け国債を買う

後藤 それは結構あると思います。私も数カ月前、個人的にも個人向け国債を買ってみました。そのときも、noteのメンバーにも記事を書いてお伝えして、割と受けがよかったです。noteを見てくださっている読者は、株を当然やっているんですけど、金利が0.7%に上がってきたとはいえ、株の利回りよりは低いし、株ほど大きく動くわけではありません。だから、そんなに興奮するようなものでもないんですけど、ただ、銀行に預けておくよりはよさそうだよねと。

また、いくら株のリターンが魅力的だからといっても、余裕資産の100%を株や投資信託に入れている人ばかりではないので、余っているお金の一部をずっと銀行預金に寝かしておくのだったら国債で持っていたほうが、リスクも低いうえにリターンも定期預金よりは高いですから、ここはもっと買う余地があるのではという話をしました。

金利が1%を超えてくると、より引きがあるというか、例えば、個人向け国債の初回適用利率がいつか1%を超えそうだというときがあったら、私もXでも書くと思いますし、そうしたら意外と反応がある気がします。例えば、個人向けの社債でも、1%を超えると売れやすくなるという話もあり、日本国債も1%を超えてくると、光が当たりやすいかもしれないですね。

先ほどおっしゃったように、グロソブが売れていたのは毎月分配が受けたという面もあるでしょうけど、見た目の分配金が大きい点もあります。NISAで売れている個別株も配当利回りの高い株だったりすることから明らかなのは、多分日本人は利回り好きなんですよね。日本国債に光が当てられないのは、利回りが低かったからで、金利がついてくると多分興味がでてくると思います。もちろん株のキャピタルゲインで興奮する人も一定数いるけれども、淡々とそこそこのチャリンチャリン(インカムゲイン)が欲しいというニーズはありそうな気がします。

服部 日本の個人金融資産を見たときに、現時点では、半分程度がまだ預金であって、NISAなどで株式投資が普及したとはいえ、この大きな構図はあまり変わってないと思うんですよね。その預金が大きく動くタイミングがあるとしたら、そのすべてが株式や株式型の投資信託にいくというよりは、個人向け国債や債券型ファンドへ動く部分もあるのでは、と思います。

後藤 アメリカの国債についても、S&P500のリターンと米国債の金利が似ているという議論もあります。株は最近、S&P500などの値上がりが著しいので、国債の金利が小さく見えるかもしれないけど、株は毎年必ずしも上がるとは限らないなか、世界一安全といわれるトレジャリー(米国債)で4%。日本だったら4%の配当利回りのある株なんてほとんどないですから。そう考えると、為替リスクはあるけども、アメリカの国債に興味を示す人はこれから増えてくるような気がします。株の調子がいいので、日本人から見て米国債は、そこまで色鮮やかに見えないかもしれないですけど、今後株が下がり始めて、株安リスクが意識されたときに、米国債の魅力は出てくる気がします。

もちろん円高になったら大変だという議論もありますが、もともと円100%で資産を保有するほうがリスキーという見方もあり、もうちょっと分散したほうがいいという大きな流れはあるじゃないですか。分散したほうがよくて、その先に世界最大の安全資産である米国債で利回りが4%くらいあれば、すごくよい商品のような気がするんですよね。そういう意味で、余裕資産の1~2割などを、外債で持つのが普通になってもいいかなと思いますね。

後藤達也氏
後藤達也氏

国債や債券に向き合う時代

服部 今後の金融政策の動向次第で、金利が上がっていくと、国債や債券にちょっと向き合わざるを得ないような感じになるかもしれませんね。

後藤 個人向け国債は定期預金の代わりにいいですよというのは、数カ月前も書いたんですけど、金利が1%などになってくれば、個人向け国債も悪くないという点は発信していきたいなとは思います。

服部 『はじめての日本国債』では、個人向け国債の商品性についても触れていますが、個人向け国債を検討するうえでも、国債市場や金利の考え方を知ることが大切だと思います。

後藤 個人向け国債というのは呼び水なわけですよね。国債に興味を持ってもらうきっかけであって、仮に個人向け国債を持つと、金利や国債市場についてもうちょっと知っておきたいなというときがあります。例えば、個別株を買った場合でも、財務諸表をちゃんと説明している本があれば買いたいということがあります。そういう位置づけで、もともと財務諸表に興味なかったけど、何かを買ったきっかけで興味を持ち始めるみたいなルートで広がるかもしれないですよね。

米国債は金利が4%、株安リスクのときこそ知りたい国債の知識とは?「個人向け国債であれば元本保証であるし、途中換金もできる」_3
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取材・構成:日野秀規 撮影:内藤サトル

はじめての日本国債
服部 孝洋
はじめての日本国債
2025年1月17日発売
1,100円(税込)
新書判/272ページ
ISBN: 978-4-08-721348-5

【「国の借金」で経済動向がよくわかる!】
「国債」とは何か。おそらく多くの人が「国の借金」と答え、いい印象は抱いていないだろう。
しかし、国債が経済においてどのような役割を果たしているかはあまり知られていない。
実は国債の仕組みがわかれば、いま日本経済で起こっている変化を理解するのが容易になるのである。
日本における国債の仕組みを入り口に、債券や証券、日銀の市場操作などの金融政策、銀行や生命保険の運用などの解説を通して、日本経済の見方が身につく入門書。

【目次】
第1章 国債がわかれば金融の仕組みがわかる
第2章 国債(債券)に関する基本
第3章 証券会社と国債市場の重要な関係
第4章 日銀の役割と公開市場操作(オペレーション)
第5章 国債からわかる日本の金融政策史:量的・質的金融緩和から量的縮小へ
第6章 銀行や生命保険会社と国債投資の関係
第7章 日本国債はどのように発行されているか
第8章 デリバティブを正しく理解する
第9章 短期金融市場と日銀の金融政策
 

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