だし巻きを求めて大勢のインフルエンサーが来店するように

——そもそも、なぜ飲食業界で働くことを選んだのでしょうか? 

高校までは、地元で甲子園を目指す野球少年でした。高3のときに甲子園の夢に破れたあと、親に恩返しがしたくて、初任給がいいところに就職することにしたんです。それが、大手飲食チェーンを運営する会社でした。

その後、就職と同時に大阪へ引っ越したのですが、19歳で入社した最初の会社は、21歳のときに辞めて。次にアルバイトで勤めさせてもらった居酒屋「鳥と豚と器 がっちゃん」が、僕の料理人としての人生に大きな影響を与えてくれました。

人気インフルエンサーらからも支持を集める「いごっそー」のだし巻き卵(写真/集英社オンライン)
人気インフルエンサーらからも支持を集める「いごっそー」のだし巻き卵(写真/集英社オンライン)

——どういった点で?

そのお店は閉店してしまったのですが、看板メニューだった「鶏がらスープでだし巻き」に、とても感動したんです。味はもちろん、食感や見た目……すべてが魅力的で、どうしても自分でも作れるようになりたくて、毎日練習しましたね。

店長がとにかくいい人で、「どれだけ卵を使って練習してもいい。その代わり、作ったものは全部食え」と言ってくれて。営業後に、他の従業員に付き合ってもらいながら、1日20〜30本作って、それをみんなで食べるという生活を送っていました。

最初の2週間は、冗談抜きで卵しか食べていませんでしたね。気がつけば、営業後の練習だけで2週間で1000個以上の卵を使っていました(笑)。

厨房に立つだし巻き兄さん(写真/集英社オンライン)
厨房に立つだし巻き兄さん(写真/集英社オンライン)

——その後、ご自身のお店を持ったのでしょうか?

その居酒屋を辞めたあと、別の飲食経営の会社を経てから、「いごっそー 高知家」を開店しました。 “いごっそー”というのは、土佐弁で「頑固で気骨のある男性」という意味です。

“高知家”は、高知県と高知県地産外商公社が実施する、高知県の振興キャンペーンのこと。いわば「高知県公式」といったニュアンスですね。ちゃんと高知県に申請して、使用許可をもらっています。

この店では、県を代表する「かつおのたたき」などをウリにしているのですが、常連さんには「だし巻き卵が絶品で、知る人ぞ知るメニュー」と言ってもらえているみたいです。

——SNSなどで動画がバズってから、お店やご自身に変化はありましたか?

めちゃくちゃ変わりましたよ。それこそ、だし巻き卵を食べるためだけに予約してくれる方もいますし、北新地にある超有名な高級鮨店の大将が、わざわざだし巻きを食べに来てくれたこともあります。

あと、お店ではチャンネル登録者数45万人のYouTuber「カモミールチャンネル」が監修した塩を販売しているのですが、コラボ企画として店でその塩を使っただし巻き定食を提供したところ、450人以上のお客さんが来てくれました。店の前に200m弱の行列ができて、町中で「何事か」と騒ぎになったほどです。

それに、インフルエンサーの方が大勢お店に来てくれるようになりました。プライベートなので名前は控えさせてもらいますが、みんなの総フォロワー数を合わせると、1億人はくだらないと思います。