自分にやさしく寄り添うことは、心を回復させるということ
理沙さんはそっとクッションを撫でながら、心の中であの時の自分に向かって「よくがんばったね」と伝え、静かに涙を流していました。
「少し心が温かくなった感じがします」と理沙さんは言いました。
「今の温かい感覚を持ちながら、彼のことを思うと、どんな気分になりますか?」
「え……そうですね。やっぱり、彼のことが好きだなと思います。それって、変ですか?」
「全然変じゃないですよ」
「よかった!(笑)」と話す理沙さんの雰囲気は、それまでよりずっと軽やかで自信に満ちているように見えました。
自分にやさしく寄り添うことは、心を回復させるということでもあります。
「やっぱり、彼のことが好き」と、彼のことを好きな自分にもマルをつけてあげることができるようになったりします。
理沙さんは、そんな「彼のことが好き」というシンプルな気持ちだけを持って、次のデートに臨むことができ、2人でとても楽しい1日を過ごしました。そして、彼女は最後に勇気を出して、やさしい雰囲気と口調で彼に伝えました。
「私、あなたに嫌われるのが怖くてずっと言えなかったことがあるの。本当は、メッセージを返してほしい。忙しかったらスタンプ一つでいいから」
彼は、「そうだったんだ。ごめんね。僕はずっと男友だちしかいなくて、いつもあんな感じでやり取りしていたから。最近、君がずっと元気がなくて、君に嫌われたのかなと思っていた。教えてくれてありがとう」と言いました。
そこで、ようやく2人はお互いに不安を抱えてすれ違っていたことに気づくことができたのでした。
文/森川陽介
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